編集員通信


“ジョッキーは誰でもファンを大切に”

 淀短距離ステークスの表彰式終了後のウイナーズサークルで、周囲を取り巻いていたギャラリーの要望に応え、ミルコ・デムーロが次から次へと差し出される色紙(のようなもの)へせっせと筆を走らせている光景に出食わした。仲々やるもんやなァ、とその場はいたく感心したのだが、仕事も終わり栗東へ帰りの車中でこの話をしていると、小原TMが「そんなんデムーロだけやないですヨ。他のジョッキーでもやってることですワ」だと。ホンまかいな。

記者席は室外にも設けられていて、発走に合わせて室内から出て行くわけで、全馬がゴール入線し、特に異常がなければ即座に室内へと戻ってリプレイ(場内モニターTVで放映されているのと同じ)にてレースを振り返る。レース確定のランプが点灯すれば、次はパトロールビデオで数回繰り返される縦の動きをチェックする。7階に相当する位置なのでパドック迄行きたくとも毎回となると行けない。そこで、パトロールビデオを見た後は、やはりモニターTVによってパドックにおける各馬の様子の確認作業へと移るわけだ。そのために、正直なところ、表彰式まで見ていることは皆目ないと言ってよいぐらい。たまたま外に居残っていたためにそのシーンに遭遇しただけの話。デムーロ以外の騎手の名誉のためにも、そのことについては触れておいて下さいと小原TMに頼まれた。

ジョッキーは、ファンサービスという点については細かな心配りをしている。「サインを書くことで喜んで貰えるのなら幾らでも書きますよ」と殆どが言っているし、実行もしているそうだ。ただ、次に騎乗予定がある場合は、そのための準備をしなければならないし、他に所用があることもある。いつ迄も延々とサインしていられない事情もあり、どこかで打ち切らねばならない。まだまだ沢山差し出されている手を拒んでその場を去らねばならぬ時のジョッキーの気持ちは察して欲しいと言う。

そうだったんだァ。特に阪神競馬場ではサインを求めるファンの数が多いとか。でも、決していい加減にはしていませんから。

編集局長 坂本日出男

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