編集員通信


“心したい地方所属馬の検討”

 1回京都7日目の若駒ステークスを勝ったのは園田所属のダイトクヒテンだった。翌日の某スポーツ紙には“金星”という大きい見出しが躍り、その力走を称えている。“金星”とは、相撲で平幕(ひらまく)の力士が横綱を負かした時の勝ち星を言う。どれが横綱やねん、ということになる。言葉の揚げ足を取るつもりはないが……。

 単勝が8頭立て7番人気で103倍ものオッズだから、平幕扱いをされても仕方なかった。調教も、競馬も見ていない馬を能力比較の対象にしていることが原因。特に芝の適性が不明であるがために起こったこと。レジェンドハンターがデイリー杯3歳ステークスに出走した折りもよく似たパターン。ただ、情報の信憑性から、ダイトクよりは評価が高かったが、似たり寄ったり。結果も予測を遥かに上回っていた。

 次の朝日杯3歳ステークスの時には、ある程度の能力把握が出来ているので、当然のように1番人気に推されていて、それ相応の答を出している。

 若駒ステークスを振り返ってみると、前半の1000mが1分4秒0という超スローペース。抑えるのに気を遣うほど掛かり加減に行けたのはむしろ願ってもないこと。13秒近いラップが続いたあと、半哩からいっぺんに11秒台へとペースアップされた。普通はそこで付いて行けなくなるのだが、幸いにも下り坂にかかっていて、馬に負担をかけないで加速が出来、離されることなくペースメーカーに同調出来た。4角どりでも、トップからそう差はない。アドマイヤレースを置いてきぼりにし、先に仕掛けたエリモブライアンさえも有無を言わさせず差し切ったのは地力そのものであり、上がり34秒5の数字も悪くない。頭数増やペース次第で、脚質的にはコンスタントとは言えないかも知れないが、レベルの高いところでも好結果は残せる力を秘めている。

 98年の白梅賞でスペシャルウィークを破った名古屋所属のアサヒクリークの例もある。その後きさらぎ賞でスペシャルウィークに報復された後、JRAへの参戦はない。特に3歳や4歳の早期における対戦では、夏の北海道戦を持ち出す迄もなく、未知の地方馬がJRAの評判馬を撃破するケースは今後も絶えることがないだろう。戦う前から、鼎の軽重を決めてかかり、見下げていなかっただろうか。予想者の姿勢も改めて問い質された。

編集局長 坂本日出男

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