編集員通信


“トライアルと本番、馬場の違い”

 3着迄に優先出走権の与えられる桜花賞トライアル、チューリップ賞は、生憎の雨の中、馬場一面水浸し不良の状態で行なわれた。見た目ほどの荒れ馬場ではなかったので、古馬なら我慢が利いていたようだが、神経過敏な4歳牝馬の集団にとっては、かなり厳しい競走条件であったようだ。レディミューズ(2着)の岡部は“来るには来たが、こういう馬場は決して上手ではない”と言っていたし、勝ったジョーディシラオキの武幸四郎でさえ“最後の直線は止まっていた。しかし、後から誰も来なかったので勝てたわけで、恵まれた”と言う。非力なサマーベイブは後方のままなす術もなく終わり、1番人気チアズグレイスは“ノメるところはなかったのに、追い出すと伸びない”と首を傾げている。厩舎側に気遣って余計なことは喋りたくない、という気持ちが松永幹に働いたのだろう。まだ太かったし、大飛びのフットワークだから、一般的に言っても道悪は不向き。そもそも、こんな馬場になるとは予想作業の段階で思いも及ばなかった。よしんば、馬場状態を的確に把握していたとしても、ジョーディシラオキの逃げ迄は考えられないし、ごく一部の人を除いて、こんなに頑張るとは想像も出来なかったろう。
 さて、結果は出た。この中で権利を得たメンバーは桜花賞へ直行する。良でも凄く時計のかかった98年、稍重だった97年のチューリップ上位入線馬が本番ではどうだったか。本番でも不良馬場になった97年は1着オレンジピールは5着。2着スカーレットメール不出走、3着メジロドーベルが2着した。だいたいトライアルの成績と繋がっている。98年は1着のダンツシリウスが11着に、2着ロッチラヴウインクは4着、3着アインブライドは10着だった。2秒9も速いレースになって、勝ったのは4着だったファレノプシス。トライアルと同じような馬場状態だと、そのまま当てはめて能力比較してよいし、大差ない答が出そうだが、道悪から良馬場へと変化すれば、別の形の競馬になり、スピードを減殺されていた面々が一気に浮上して来る。トライアルレースの結果の受け止め方は、そのへんを考慮し融通性を持たせることが肝要。“改めて言われんでもよう知ってるワ”でしょうねェ。

編集局長 坂本日出男


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