編集員通信


“ポスト武豊へ望む若手の奮起”

 武豊が安田記念後に日本をたちアメリカに仕事の拠点を移して行くことを3月29日、栗東トレセンで追い切りの合間を縫う記者会見で発表した。2月27日付週刊競馬ブックの「インターナショナル週間トピックス」で既に報じていたように、米国発の報道では伝えられていたことで、記者会見で語られた内容は同じことで、改めてそれを本人の口から日本のマスコミに公表したという形であった。
  滞在期間については明言してない。エージェントと契約を結んでいるわけだから、常識的に考えても期間が短いと、担当者の乗り馬を調達する範囲が限られてきて仕事にならない。馬は集まらない。G1クラスのレースを狙う野心があるなら(当然あるはず)、デビュー時からコンビを組むのが理想。日本流に言うなら、3歳から引退まで通して乗るのが基本。少なくとも3〜4歳時の1年半ぐらいは依頼する側も任せられる人選をしよう。物見遊山で来て、つまみ食い的な感覚で乗って欲しくないし、そんな騎手に大仕事の出来る馬を任せはしないだろう。そうしてみると米国での滞在は相当長期間になるはずだ。騎乗技術を磨くことが一番の目標だそうだ。ナカタニ、ソリス、マッキャロン、デザーモ等と腕を競うには、年齢的にも盛りの今が仕掛け時。
  ところで、武豊がいなくなって困るのは、まずJRAであろう。そうでなくても売り上げは低迷、新種の馬券発売で何とか離れかけるファンを繋ぎ止めようと躍起になっている最中だけに、集客能力の高いジョッキーに去られるのは大打撃。ファンも、連対率4割という信頼度抜群のスターがいなくなれば、武豊を買う、買わぬの問題だけでなく、勝馬検討の指標を失うことになり、混乱は避けられない。第2の武豊の出現まで、“当分の間競馬はお休み”という人がないとは限らない。残された若手に託されたポスト武豊。武豊の勝ち鞍が誰に転がり込んで来る、という損得のみを考えているようでは情けない。
  「若いもんは、武豊がいなくなる事の重大さ、危機感を理解していないのではないか?」と危惧する調教師が少なくない。特に、22歳前後の福永、高橋亮、幸、武幸四郎の発奮興起が待たれる。

編集局長 坂本日出男

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