編集員通信


“前向き石山騎手、明るさ失わず”

 クラシックの第1弾桜花賞は、単勝1.8倍の大本命馬サイコーキララが4着に敗れ、馬連27番人気が示す小波乱となった。手前味噌で恐縮だが、全18頭中、勝因、敗因の聞き取りが出来なかったのは8着ベルグチケットの柴田善騎手と、18着パールビコーの上村騎手だけ。サイコーキララの談話は石山騎手でなく、浜田調教師から取材している。
  普段はいない一般の新聞、雑誌のカメラマン、記者が加わり、人混みを捌くだけでもやっとと言うほどゴッタ返している取材現場で、例えひと言であれ、これだけ多くのコメントを限られた場所、時間内に取るのは大変なことだ。
  ところで、主役と言うべき石山騎手の話がなかったことについては、浜田調教師が弟子の胸中をおもんばかって代弁したもので、石山自身は逃げも隠れもしていない。その場に居合わせていた。翌朝のスポーツ紙では、コメントの取れなかった社が、その原因に“逃げた”とか“ジョッキールームから出て来なかった”とか、果ては“顔が青ざめていた”とか好き放題に書かれていたそうだが、石山にすれば、“洗いざらいありのままを話したかった”と、直接取材した小原記者に後日語っている。
  「スタートで半馬身ほど出遅れたため、予想した位置を取れなかったが、折り合いをつけることに専念してスムーズには運べた。そのへんはご覧の通り。にもかかわらず、無理してないつもりなのにいつもなら楽にトップへ接近出来る時点での手応えが悪過ぎた。直線は外へモタれて苦しがっている。振り返ってみて、移動柵を取り除き、最も荒れていた個所を通る羽目になったことから嫌気をさしたのかも知れない。レース後すぐ息が入っていたように、バテてはいない。全力を出し切っていなかった印象。そのことからも、決して力負けではなかった。オークスではきっと巻き返してみせる」と……。
  石山は少しも挫けてはいない。いつも通り、12日(水)13日(木)の追い日には自厩舎の馬の調教に励んでいた。G11番人気のジョッキーの背負わされる重圧がいかに重いものであるか、そうそうない身をもって経験したことを、今後いかに生かすか、無にしないためにも、これを踏み台にして一段階上の騎手を目指して登って行って欲しいと願う。

編集局長 坂本日出男

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