編集員通信


“復権を目指す奮闘伊藤雄厩舎”

 トレーナーがリーディング争いで、1週間に2勝以上すれば、俗に固め勝ちと言われている。せいぜい3勝がいいところで、4勝となると滅多にない。そのへんは、1日に5勝も6勝も出来るジョッキーとは違う。
  ところが、今年は、いや最近はどうなっているのか、ゴロゴロそんな記録が誕生している。先週、山内、加用厩舎が各4勝、池江、松永善、増本厩舎が各3勝。2回中京6日目(6月4日)終了時点で関西は伊藤雄調教師が20勝。関東は21勝で常勝藤沢和調教師がリーディングトレーナー争いのトップに立っていた。
 翌週に北海道戦の開幕を控えていた時のことだ。伊藤雄厩舎の番頭格、笹田助手が言っていた。
「坂本さん、今年の夏の北海道では20勝しまっせ。目標なんですけど、僕自身とすれば自信があります」だと。
  普段、決して大言壮語するような御仁ではない。至極あっさり、しかもきっぱりと言いきるものだから、「あ、そう」としか返す言葉がなかった。そして翌週、やりよりましたがなァ。東京と中京でそれぞれ1勝。主力を集めた函館で4勝の都合6勝。こんな固め勝ち私の記憶の中ではなかったような気がするが……。
  それで終わらないから驚き、トップをひっくり返された藤沢和師が次週3勝で即座に追い討ちをかけると、その翌週に伊藤雄師が4勝。そして先週、両雄の打打発止の首位争いに刺激を受けたわけでもあるまいが、前記5厩舎の大発奮。最終的には、リーディングトレーナーの座を射止めるには少なくとも50勝を突破しないと当確とは言えないだろう。何せ、藤沢和師は昨年こそ49勝止まりだったが、その前の4年は連続して50勝台をマーク、60勝に手の届くところまで迫っていたのだから。
  笹田助手も「結局は藤沢さんに勝てないのでは……」と意外に冷めた感覚で語ってはいたが、いやいや、口と腹とは違うんちゃう。トップ奪回、復権へ向けて伊藤雄師も衣の下の鎧をチラッ、チラッと覗かせていたから。

 

編集局長 坂本日出男

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