編集員通信


“馬場閑散として併走調教に悩み”

 先々週も書いた馬場の改修工事は第1弾の坂路馬場が終了した。入れ替わるようにDウッドコースが改修に入った。夏場は、北海道、小倉、栗東と3場に分散される栗東の在籍馬。そうでなくとも少なくなっているのに、坂路が開くとCWコースは入場数が半減。一時は悲鳴を上げていた採時担当者も、手持ち無沙汰で暇を持て余している状態。
  馬が少なくなったことで調教師の苦労の種がひとつ増えた。馬の調教のひとつの方法として「併せ馬(あわせ馬)」というのがある。調教は、基本的には単走でやられるものだが、複数で走らせることによって、闘争本能を引き出したり、恐怖心を取り除いたり、又、相手との能力比較をするのに好都合であったりする。
  自厩舎に適当な併走相手のいない時が問題だ。それにふさわしいパートナーをどこからか捜さねばならない。馬場入りしている馬が多ければ、めぼしいところを見つけ易いし、その場で騎乗者同士、或いは調教師同士の話し合いで交渉成立となるのだが、馬の絶対数が少ないと仲々思うような相手に巡り合えない。
  併せ馬は、ひと口で言えば簡単に聞こえる。ところが、実は相手選びは非常に難しい。他厩舎に頼むなら、自分の都合ばかり言えない。追い切る時間帯、コース、距離。開始から終了までの流れ(ラップの刻み方)。双方のやりたい方法が合致していなければ御破算となる。併せ馬でびしっと気合をつけたくとも、相手がいなければ泣く泣く単走での仕上げですまさざるを得ないわけで、表面に出ないところで結構悩んでいる。
  無断で前を走っている馬を追い掛け、ちゃっかり併走の形にするケースもないことはない。スムーズに行けば“おおきに”ですむが、相手を掛からせ、ペースを狂わそうものならひと悶着は免れない。広そうでも狭いサークル内のことだし、そんな泥棒猫のような真似は出来ないし……。

 

編集局長 坂本日出男

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