編集員通信


“暮れの風物詩W・S・J・S”

 

 回を重ねること14回。今や競馬における暮れの風物詩となったワールドスーパージョッキーズシリーズ。その海外招待騎手8名が発表された。

 オリビエ・ペリエやジョン・ムルタは短期騎手免許で来日し、数多くのプレーでファンに接してきており、すっかりお馴染み。このシリーズには初登場となる香港のロバート・フラッドにしても、今年の安田記念ではフェアリーキングプローンに騎乗して見事に優勝しており、まだ記憶に新しいところで、鮮明に当時のシーンを思い浮かべることが出来よう。

 アメリカのジェリー・ベイリーやケント・デザーモは既に2回も出場していたし、オセアニアのダミアン・オリヴァー、オピー・ボッソンも共に2度目の出場となる。ランフランコ・デットーリは今やジョッキーとしては世界の頂点に立つ存在と誰知らぬ者がいない。

 こうしてみると“あの騎手ならこう乗るだろうなあ”とプレーを思い描ける騎手ばかりだ。8月の小倉で行われたアジアジョッキーズシリーズでは、戦績は事前に発表されているので、横顔が分らないわけではないが、ビデオでも見ることの出来る欧米とは違い、自分の目で実際のプレーを見ることは殆どなく、数字の上っ面だけでは信頼しきれない部分が残るのは仕方なかった。確かめ、納得したところで、さァ、それではとなる頃はもうシリーズは終っている始末。消化不良の感は否めない。

 ワールドスーパージョッキーズシリーズは、選りすぐられた集団だけあって、激しい駆け引き、巧妙な攻防はあるもののレース自体は滑らかな流れで展開する。その上で、既成概念を覆すような乗り方をしばしば披露してくれるので、いつの場合もワクワクしながらジョッキー1人1人の手元を注視してきた。どこで仕掛けるのか、コースをどう取るのか、枠にはまらない斬新奇抜な戦法を取ってくるところがたまらない魅力。ある意味では一期一会の縁。

 厩舎側の注文も、あく迄もアドバイスであり、参考にはしても、忠実に実行せねばならない義務を持たず、自分の感性で乗ってくる。それだけに、本来は逃げ馬だと思っているものを最後方で待たせ、直線大外に持ち出して襲いかからせたり、追い込み馬のはずがハナを切っていたり。その程度のことにはもう驚かなくなってきたが、とかく、他人との違いを強くアピールする姿勢を誰もが持っている。自分を認めさせることに関しては国境はないよう。それがプロ気質と言うものだろう。12月の第1週をお楽しみに。

編集局長 坂本日出男

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