編集員通信


“又やって来ました若き業師デムーロ”

 ミルコ・デムーロ(21歳)が今年もイタリアからやって来る。武豊と同等、人によってはそれ以上の評価を与えていたオリビエ・ペリエでさえも、来日1年目は8勝程度だった。そこで認められ、同年12月に再来日した時には、8週間で13勝まで勝ち数を伸ばしている。それからみると、35勝は破格の数字だ。人との対話が円滑に進められたこともあるし、いかに卓抜した技量を持っていたかもよく分かる。逃げて良く、追い込んで良い。変幻自在に馬を操る。初めて跨っているにもかかわらず、まるで何度も乗っているお手馬のごとく懐柔するのだから恐れ入る。

 一応今回日本での予定は、12月2日の中京開催を手始めにしての3カ月間だと聞いている。JRAの開催がない日には、大井、川崎、船橋は勿論のこと、佐賀、金沢、高知まで足を伸ばし八面六臂の活躍。疲れを知らぬ若さの特権と言うのか、未知の文化に触れ合うのを楽しんでいるよう。本人は結構面白がっているのかも知れない。

 身元引受人は前年同様に森調教師。同厩舎には、英国留学で外国語に堪能な5歳上の良き兄貴分、松田助手がいる。面倒見が良くて、デムーロにすればどんな相談にも乗ってもらえ、心を開いて打ち解けられる得がたい存在。異郷にあっての孤独感にさいなまれることとも無縁で3カ月を過ごせる。籍を置いていた森厩舎の馬では、結局去年は1勝しか出来なかったが、大御所伊藤雄師に認められたのは大きく、強力なバックアップを受け、同厩舎だけで11勝も挙げている。

 勝率0.458という驚異的な数字を残していた。2頭に1頭は勝っていたのだから、
“今年も来れるのなら又おいで”
と声も掛けたくなるだろう。デムーロの方にしても、すっかり道はついた。
“又お願いします”
と二ツ返事で引き受けるはずだ。

 武豊は阪神の1週目にワールド・スーパー・ジョッキーズシリーズにはいるが、その後は未定。ポッカリ開いたその穴を埋めてくれるのは、短期免許の期間中、常時臨戦態勢にあるデムーロしかいまい。安藤勝や川原と言っても、JRAの交流競走へ参加する馬がいないことには来れないために、勘定には入れられない。そのことを思えば、デムーロこそ盛り上げ役としては誠に貴重。こういうジョッキーが1人いるだけで、レースそのものに緊迫感が増してくる。ひょっとすると前回以上に勝ちまくるかも知れない。

 

編集局長 坂本日出男

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