編集員通信


“注目すべき好センス秋山真一郎”

 武豊が仕事の拠点をアメリカの西海岸地区に移して半年になる。度々帰国しているせいか、不在意識そのものは薄かったように思う。今年は新たに、3月以降フランスへ移る話が出ている。そうなれば昨年とはかなり様相が変わるだろう。通常のペースで年間180勝、昨年でさえ130勝していた。その星の奪い合いは、どうせランク上位の一部のジョッキーに片寄るのだろうが、思いもよらぬ若手が台頭する可能性は残っている。

 新世紀の幕が明けてから早や1カ月経過した。リーディング・ジョッキー争いは東西共に常連さんがそれらしく並んで上位を占めている。デムーロ、ハリソンは別にして、オヤッというのが21歳、デビュー5年目を迎える秋山真一郎だ。過去の4年間はコンスタントに年間30勝台を確保しているが、物足りないのは、そこから落ちない代わりに、突破もできていなかったこと。枠の中に入ったままだった。勝ち鞍の3分の1はローカル戦での稼ぎであった。そのことはマイナーな存在であったことを象徴していよう。

 ところが、過去3年間の1月だけの成績を見ると0、1、2勝だったのに、今年はいきなり8勝、ベストテン4位タイへ飛躍してきた。一時的な現象で、こんなことは珍しくない。ただ、その中に1日(1月28日)だけで4勝の固め勝ちがあった。新馬のニチドウマジックを除く3頭は、決して傑出していたわけではない。2番手から差すというひとつのパターンに嵌めていたが、その番手を取らせたのはテクニックだった。

 ひと口に固め勝ちといっても、せいぜい3勝止まり。武豊や岡部級ならともかく、それほど手駒は揃わないのが実情。よしんば馬は揃ったとしても、そんなには勝てない。Aクラスの騎手に“今日は4〜5勝いける”と耳にタコのできるほど聞いてきた。だが、実現できたのは1割もなかったように思う。8頭乗って4頭勝った。これは本人に天分があるからできたこと。推量では、依頼サイドからの作戦面における制約がなかったものと考える。自由に乗らして貰えればこのぐらい乗れる若手はいるのだ。有言実行型の好センスを持った、時に遇うこの若者に注目したい。ポスト武豊の候補の1人ではあり得るだろう。

編集局長 坂本日出男

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