編集員通信


“若いが凄腕のスミヨン来日”

 2月1日から3月31日までの2カ月間短期騎手免許でフランスから19歳のクリストフ・スミヨンがやってきた。小倉競馬で騎乗し6戦目にして早々に記念すべき初勝利を挙げている。弟弟子ということもあって、いろいろ先駆者ペリエの薫陶を受けて来日する気になったのかも知れない。

 風采や容貌はいかにも年齢相応の幼さを残しているものの、モニターテレビで観戦する範囲内の騎乗ぶりは、誰憚ることのない一端の堂々たるジョッキー。初勝利のお祝いに贈られた花束を抱え、インタビューの終わるのを待ち兼ねていたウイナーズサークルをグルッと取り囲んでいた多数のファンが、次々と差し出す色紙の山をニコやかな表情で、ひとつひとつ丁寧にサインして行く。“日本のファンは本当に温かくて感動している”と語っていたのも、決して社交辞令ではなさそうな愛想の良さであり、好感が持てた。

 ペリエを初めて見た時の驚きが大きかったせいか、初来日でそれを上回る結果を出したにもかかわらず、デムーロに対しては、このぐらい当然やれる乗り役だと平静に眺めていられた。スミヨンがどれほどの活躍をしようが、やはり変わるまい。素材ということでは、ペリエ、デムーロにも匹敵する潜在能力の持ち主のように思う。

 野平祐二氏がペリエの素晴らしさを称えた文中に「日本人騎手がどんなに努力しても、ヨーロッパ人騎手を超えられない領域があるようだ」とあった。外国に疎い人間としては、シャシャリ出る幕はなく“そんなもんかなァ”と文化の違いについては漠然とではあるが、無意識に頷いていた。

 ペリエの時は親友武豊の関係で武邦師、デムーロは森師が身許引受人になっていたが、スミヨンの松田国師もその時に専属騎手を抱えていない上、手駒に良駿を多く揃えているということで共通する。従って、より多くの勝つチャンスが与えられ、それを踏み台にして他厩舎からの騎乗依頼の増加へと結びつけていたパターンを踏襲することになるのだろう。今年既にデムーロ、ハリソン、ペリエや、安藤勝等を起用。JRA所属にこだわらず、外部からの騎手への理解度の高い松田国師の下へ拠ったことは正鵠を射ている。やがては先輩達同様、リピーターとなって、欧州がオフになる年末から来日する常連さんに名を連ねることだろう。とにかく、1日も早くその騎乗ぶりを生で見てみたい。ウズウズさせる。スミヨンて憎い奴っちゃデ。

編集局長 坂本日出男

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