編集員通信


“クロフネのお手並み拝見”

 桜花賞、皐月賞は病室のちっちゃいテレビでの観戦。勝負服の見分けがつきにくくイライラさせられるし、迫力にも乏しい。アグネスタキオンに今ひとつ凄味が欠けて見えたのはそのせいかも……。タキオンのこれまでのレースは、手綱を押さえたままでトップへ接近してきていた。それが皐月賞では3分3厘より仕掛けないとスピードが乗ってこない状態。“何かヘン、これは危ないゾ”と思った。だけに、あと1ハロンになってダンツフレーム、ジャングルポケットが連れ立って、踵を接するように追いすがってきた時は“やられたッ!!”と……。一般的にいってあれは完全に負けパターン。ところが、もう売り切れ、といった感じから交わさせないで頑張り通す。凡馬ではない証明。1馬身半ぐらいまで接近された以後は、これより立ち入り禁止ゾーンとばかりに、それ以上の追撃を許さず、とうとう最後までその間隔を守り通した。あれこそ真に強い馬の戦い方であろう。

 1カ月半ほどレース間隔があって速い追い切りは2本、位置取りとは別に、そのへんも思ったほど鋭い伸びが見られなかった追われてからの脚に関わりがあったかも知れない。ダービーは春の最終、最大目標となるレースであり、もう寄り道をせず向かうということだし、そこまでには時間的な余裕が十分あるから、微に入り細にわたって再点検、正すべきところは正して最善の仕上げに万全を尽くされることだろう。ある意味では、ちょっとでも心配させてくれたことが、却って良かったということになりそう。皐月賞で顔を合わせたメンバーには、次も負けそうにない。

 三冠へ向けて目障りなのは外国産馬クロフネ。ラジオたんぱ杯3歳Sではジャングルポケットにも先を越される3着に終わっているが、ひと息入れて立て直した毎日杯の勝ち方がひと皮むけて強烈な印象を与えていた。NHKマイルカップとダービーの両方を狙っていると明言する松田国師。フランスに本拠を移している武豊が、この馬のために一時帰国するという。かつてのお手馬ダンツフレームから寸法を測ってみて好勝負になる見通しを立てたからに違いない。NHKマイルカップで2着以内にこれないことにはダービーに出れないマル外クロフネ。そうそう手抜きは許されず、小手調べのほど、ジックリお手並み拝見と行こう。

編集局長 坂本日出男

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