編集員通信


“調教師を卒業した後は馬主に”

 5月12日京都7日目6Rに、地方競馬の園田から挑戦してきたプラセールが、4角最後方あたりから追い上げて文句なしの2着確保で万馬券を演出している。品のいい、いかにも柔らかでスピード感に満ちたこの牝馬の馬主は小林稔氏。“うん?どこかで耳にしたことのある名前だなァ”と、競馬歴3年以上の人ならすぐに思い当たる節があるだろう。その通り、元JRA調教師の小林稔師その人だから。調教師を定年で退職したあとの身の振り方は人様々。浅見国一、境勝太郎、伊藤修司、古山良司の各氏をはじめ、評論家として再出発される人は少なくない。谷八郎氏の場合は、JRAのOBとして競馬関係施設への出入りは自由。水戸黄門の如き木戸御免のフリーパスを与えられているからトレセンのスタンドで調教を見られるし、新聞は小社(家が近い)へ直接取りにこられ、じっくり検討した上でいざ競馬場へ。場ではJRAのOB室があり、ゆったりと観戦できる。一般ファン同様の少額馬券で取ったの、取られたのと一喜一憂、馬券の虜となって傍で見ていても微笑ましいぐらい。

 小林稔氏は馬主になって楽しんでおられる。園田に預託しているので“あんまり高額なのは買えない。賞金に見合ったところを買っている”とのことだが、交流レースは高賞金(地方に比べ)だけに格好のターゲットになる。芝に適性のある馬体、血統からの選択は、さすが超A級の実績を残した元調教師といったところ。当日、岩田騎手に対して「道中は内々を回り、直線で最外へ持って出てから目一杯に追ってきなさい」とアドバイスを与えていた。まさしく指示通りに乗っての快走。勝ち馬にレコードで走られて2馬身1/2及ばなかったものの、小林氏は大満足の態。プラセールはこの後中京を自重して阪神で再挑戦の予定。地方所属馬の出走枠は2頭以内に決められており、申込み頭数次第では出られるかどうか直前にならないと分からない。一応出走条件に合致したレース全部に予備登録をするそうなので、1回ぐらいは出走チャンスがありそうだ。その中にはオープンの菩提樹ステークス(芝1600m)も含まれており、メンバーが手薄になりがちな時期でもあってアッと言わされるシーンがあるやも知れない。ともあれ、小林氏は馬主としての醍醐味をじっくりと味わっておられる。

編集局長 坂本日出男

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