“前が見えないことの怖さ”
兵庫県明石市の花火大会の見物客が歩道橋上で将棋倒しとなり、139名が死傷する事故が起こったのは21日のこと。歩道橋上に滞留していた推定6000人の人々が両側から激しく押し合う格好となり、まったく身動きできない状態だったそうだ。 それと違うようでいて、混乱という点で似た状態がトレセンでも起こった。25日の坂路において馬場開場の20分後ぐらい、まずヒコーキグモが鞍ズレ、騎乗者は落馬。馬装具(鞍とか腹帯、毛布)が辺り一面に散乱した。直後を走っていたデビュー前の2歳馬がそれを見て気が動転、女性の騎乗者を振り落としたのが発端となり、難を避けようとしてスピードを落とした馬、停止した馬が入り乱れ一時的に1カ所へ集団が滞留する形になった。それへ向けて、事情を知らない後続馬が次々と迫ってくる。幅員7メートルのコースに10頭以上も犇めき右往左往しているのだから危なっかしいことこの上ない。騎乗者2名は、一応その場を歩いて去ってはいたが、打撲負傷しているような歩様。最悪骨折していたかも知れない。馬の方は無事なようだった。 事故の起きた場所は400m地点の急カーブを曲がって間もない所であり、スピードを上げて追い切り態勢に入っている騎手の死角になっている。前方が見えた時点で急ブレーキをかけ、どうにか間に合う程度の距離。前に壁ができて行き場はほとんどない。幸いにも夏場になって入場馬の数が減っているので、曲馬まがいの操作によって惨事は回避されているものの、先がどうなっているのか分からないことの怖さをまざまざと見せつけられた。事故発生を告知する赤色回転燈がコースの進入口に設置されていて、警告はしている。ただ、一般的に放馬した程度なら注意さえ怠らなければ問題ない。スピードを加減せず上がってこれるから、ついその感覚で皆がやってきて、自分の目で現実を確かめて初めて狠狽したということだろう。馬が驚くのでカーブミラーは取りつけられない。拡声器により即刻伝達する方法しかないのかも知れないが、善後策として何等か手を打たないと笑って済まされない事態がいつ起こっても不思議ない。 編集局長 坂本日出男 |
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