編集員通信


“青芝フック師匠のこと……”

 小倉からの帰りに決まって顔を合わせるのが青芝フック師匠。列車は同じでも同一車輌に乗り合わせるケースは案外少ない。たまに一緒になっても席が離れていて、話す機会はほとんどない。隣りが空席の時もできるだけ傍に寄って行かないように心掛けている。師匠はサービス精神旺盛な喋りの本職。寄ってこられれば黙ってはいられない。もっとも、実は師匠は聞き上手な人であり、こちらが誘い込まれてついつい語らされてしまい、ふっと我に返って喋り過ぎを反省すること幾たびか。

 避けている本当の理由は、仕事の手を止めてしまうのが申し訳ないと思うから。師匠は自分の席に座ると途端に大きな鞄の口を開け、中から雑記帳を取り出して思索にふける。ひと昔前のようなガタン、ゴトンとまではいかないにしても、字の書ける程度の揺れは今もある。“あの振動、あれがイイんです。あのリズムで揺すられると沸々とアイデアが湧き出してきまんねン”と。気に入った着想、文句が浮かんでくれば素早く書き留めておく。メモしてしまえばしめたもので、それにふさわしい挿絵をスラスラと書き添えれば一丁上がり。新聞、雑誌の連載を複数抱えているし、ストックは多ければ多いほどいい。常に追い立てられるように先へ先へと進まねばならない宿命だから、喋っている時間があればネタ集めの方へ回したいのだとか。そうしたことが少しも苦にならない、楽しいというのだから師匠はエエ性格してまッセ。

 うちの「やじ馬でどないじゃ」はもう233回まできた。1年50週として4年半にもなるわけ。多忙な身で感心するぐらい続けられるのも、勿論好きなこともあるだろうが、四六時中、何ぞないかなと探し求める好奇心の塊のような人柄だからかも知れない。時間や骨身を惜しまず取材に駆け回る。決して手抜きをしないのが凄い。読者の共感を得られるはずだと納得。真似ようとて真似られないことだけど……。師匠今後もお気張りやしや。

編集局長 坂本日出男

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