編集員通信


“武豊の力を借りて宣伝活動を”

 イチローの名前はオリックス在籍中から耳にしていたし、彼の数々の記録更新は話題に上がっていただけに知らないわけではなかったが、さて“どんな選手なのか”となると具体的にはほとんど知らないに等しい。僅かに日本シリーズのテレビ放映で何度か目にした程度。

 ところが、アメリカに渡ってからは毎日のように実況中継があるし、イチローをメインとしたダイジェスト版は、民放も含め連日ニュース番組の中に盛り込まれているのだからいやでも目に入ってきて“何ちゅう奴ちゃ”とその真髄に触れるや凄さに舌を巻くばかり。地元シアトルシチー市民の熱狂ぶりもけだし当然かと頷かれる。我が目でプレーを幾度も見たからこそそう思ったわけ。

 競馬も同じことだ。現在では日本馬のレベルは世界のトップクラスに比肩している。残念ながらそれを認めているのは競馬ファンだけといってもいいだろう。勿体ない話やおまへんか。「競馬中継」というだけで目を背けている人は決して少なくない。そうした人々の中に抵抗なく入り込んで行くには別の角度から鉾先を向けるしかない。見れば目から鱗が落ちるように必ず真相や本質を理解してもらえるはず。

 イチローほどではないにしても、武豊の名前もかなり国民の間に浸透している。彼が外国から戻った時に常々“日本の馬って走るなァ”と同時に、馬場の違いがあって比較は難しいが“日本の馬は強いんじゃあないか”と思う、と「優駿」誌上で語っていた。最適任者の野平祐二氏が先日死去され、今では世界の競馬の中における日本馬のレベルを正確に把握し、大衆の納得のいく説明ができるのは武豊を置いて他にいない。JRAは緊縮財政の真最中にあり、おいそれと大金は出せないだろうが、テレビ等の大量伝達手段を使って広く世間の人々の関心を引くのは大切なこと。死に金にしないためにもこの際ユタカ・タケの力を借りた自主制作物で、実のある宣伝広告活動を行ってみてはどうか。

編集局長 坂本日出男

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