編集員通信


“武豊の穴を埋めたのは地方騎手”

 今年は武豊不在で、潜在能力を秘めながら心ならずも不遇をかこっていた若手に、台頭するチャンスが広がったと考えていたのだが、昨年の夏競馬終了時と比較してみて、武豊が残して行った70勝余りの行方を調べてみると、10勝以上上積みしているのは+30近くで突出している秋山と、池添、藤田ぐらいなもの。他では地方騎手の安藤勝と小牧太の2人で35勝を持って行っている。川原やデザーモへ流れて行っているものもある。デムーロの27勝分も含めてもだ。

 上位常連ジョッキーに負傷欠場や騎乗停止等のいろいろな乗れない事情はあったにせよ、上積みがないのは物足りないし淋しいことである。蛯名、柴田善、岡部、横山典の関東ビッグフォーの一角へ突如割り込んで来たのが米国(フロリダ)で修業して帰国した後藤。ああした浮上すべき契機となる明確な材料がない限り、騎乗環境の好転は難しいようだ。

 武豊は10月21日の菊花賞には帰国して乗る予定だと聞いている。それに先駆け、9月29日のシリウスS(阪神)ではケント・デザーモが来日してブロードアピールに乗ることも決定している。デザーモの場合、今のところはブロードアピール以外の騎乗についての詳しい情報は入っていない。関西でそのまま居残るのか、それとも関東へ移るのか。身許引受人が藤沢和師だった3カ月免許のうちの未消化分1カ月を利用しての再来日だけにハッキリしてない。武豊の場合は、本拠地がシーズンオフに入っているのでそのまま来春まで主戦場を日本に移すということだ。彼がいるといないでは大変な違い。障害レースを除く1日のうちの、ほとんどに騎乗する。彼ともなれば、勝ち負けに縁遠い馬はとても依頼できないから、自ずと、ある程度勝負可能な馬が集まってくるだろう。ややもすれば乱れがちなレースの流れにひとつの芯ができるから、突飛な展開の起こる可能性は低くなる。

 もしこれに一枚ケント・デザーモが加わり、安藤勝や小牧までも混じってくると、ありとあらゆるレースにおいて競馬の醍醐味を思う存分味わえるだろう。同時に、そうした厳しい中をかいくぐって伸びてきてこそ、ポスト武豊と評される。“第二の後藤”的存在の出現は求め続けられる。

編集局長 坂本日出男

目次へ戻る

copyright(c)NEC Interchannel,Ltd/ケイバブック1997-2001