編集員通信


“アグネスタキオン引退の穴埋め役は”

 アグネスタキオンの引退が8月29日、長浜師より正式に発表された。浅屈腱炎の炎症は、深屈腱炎や繋靭帯の炎症に比べると、発症率ははるかに少なく、深屈腱炎の10パーセントに満たないが、深屈腱炎のように症状がはっきり出ないので、しばしば見逃されているケースが多い。重症馬が多いのもそういった関係があるのかも知れない。もっとも、一旦かかっても長期にわたり温泉治療や削蹄の技術により、急がず辛抱強く管理することでかなりのところまで回復した例は相当数ある。しかし、体力の低下を防ぐための軽いトレーニングさえできない状態が続くと、完治は望めなくなる。軽い症状でも慢性化してしまうと競走能力は著しく落ちてしまう。

 「たとえ復帰できても、万一負けることがあればキャリアに傷がついてしまう」との渡辺オーナーの懸念が杞憂で終わらない可能性が高い以上、引退も致し方ないだろう。1ファンの立場に立てば、もっと現役を続けて欲しいが、それはあくまでも“強いアグネスタキオン”でいられたらの話。種牡馬としてなら支障のない体であるうちに、そちらの方向へ転身するのは最善の進路選択であるといえそう。

 アグネスタキオンの衝撃的なニュースが流れたのと時を同じくして、新潟記念を勝ち、勇躍秋の古馬戦線の有力候補として名乗りを挙げたサンプレイスも、レース後に浅屈腱炎を発症していることが判明、全治には9カ月以上の休養を必要とすると診断された旨、池江師の方から発表があった。98年の6月から4カ月の休養、そして99年4月から1年2カ月、2000年7月から又々10カ月間の休養と病に苛まれながらその都度、不死鳥のように甦ってきていたサンプレイスも、さすがに今度ばかりは競走馬として再起できるかどうか、かなり微妙な立場に追い込まれている。

 “秋にもっと大きいところを狙いたい”と声を弾ませていた熊沢にも気の毒なことになった。起こってしまったことを悔やんでも元には戻りそうにない。神戸新聞杯からカムバックを予定されているアグネスゴールドや、春の時点ではクラシックと別の路線を歩んでいたエアエミネムの成長ぶりが、舞台を降りた主役アグネスタキオンに代わって、秋のG1戦線を彩り、盛り上げてくれることを期待したい。

編集局長 坂本日出男

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