“武豊の究極の選択は……”
将来性の高い新馬にはトップジョッキーへの指名が集中する。5回京都の第1週で武豊にはグレートワーク(3番人気6着)ロイヤルパートナー(2番人気5着)エリーナ(2番人気6着)アドマイヤアラシ(2番人気2着)モノポライザー(2番人気1着)ビッグインディ(1番人気9着)の依頼が寄せられた。 武豊が乗るというだけで力以上に評価される傾向があるのは確かだ。物事は最初が肝心で、競走馬も例外ではない。調教師にすれば勝つに越したことはないが、それより、将来に向けてプラスになるようなレースの厳しさを教えてやって欲しいと願っている。初戦は取りこぼしていてもそのほとんどは2戦目で本領を発揮している。馬によっては稽古だけでは能力や気性を掴み切れないものも多くいる。たった1度の実戦騎乗で、即座に長所短所を見抜き、適性を読み取るところが武豊の武豊たるゆえんだ。 その彼が注目している2歳馬は、蛯名からの乗り替わりで2勝目を挙げたイチロースワン。乗り味の良さにぞっこんの態“もう手離したくない”と……。 エアグルーヴの異父弟モノポライザー。1週間前に東京の新馬戦でコースレコードに0秒1の好タイム勝ちした関東馬ローエングリンも惚れ込んでいる1頭。「次走予定の東京スポーツ杯2歳ステークスには乗りにきますから」と早々に先約を取りつけていたとか。 武豊に乗って欲しがっている馬は数多いが、ジョッキーの身はひとつ。勝ち進んで行けば必然的にどこかでかち合う。その時に本人がどれを選ぶか、究極の選択がそこで決まる。それまでの過程で、どのレースを使ったらベストなのか、陣営に忌憚のない進言のできるのは他の騎手にない特権?それを最大限に活用して何年間も大した悶着も起こさずやり繰りしてきた。 来春もパリへ戻ってしまう。折角信頼を得て手にした宝も、クラシックに乗れないでは何にもならない。ただ、今年と違って、1シーズンの滞仏で培った人間関係の成果で、向こうの調教師及び関係者との話し合いはやりやすい立場になっており、支障なく一時帰国が許されそうな状況にある感じ。一時帰国について本人も前向きに考えているそうで、ダービーあたりひょっとして乗りに帰るかも……。もっとも、調教師は決して豊オンリーではない。戦闘の指揮官の心得として、第2、第3の候補を後備えして構えている。できれば武豊で行きたいが、選択権は豊サイドにあるからと、総じて淡泊に割り切っているのが実状。 編集局長 坂本日出男 |
copyright(c)NEC Interchannel,Ltd/ケイバブック1997-2001