編集員通信


“河内騎手に戴いた記念品”

 机の上にちょこんと置いてある透明のビニール袋。中には、淡い黄色の表紙をした手帳風の物が入っている。“何かいな”と包みを破って取り出し手にしてみると、HIROSHI KAWACHI・2000Winnersと書かれている。裏表紙には雰囲気だけはソックリな自筆サイン入りの似顔絵が固い表情で笑っているデザインで配され、二曲一双のミニ屏風を連想させる記念写真2枚を組み込んだディスプレーだった。

 右側には祝2000勝河内洋、の文字の入った横断幕をつまみ持った本人の立ち姿。左側は勝利馬スパルタクスの決勝写真を設え、それをグルッと取り巻いているのがスポーツ紙の見出し群。「45歳、17度目の挑戦で日本ダービー初戴冠」とか「史上3人目“いぶし銀”プレー、河内重賞100勝」、節目を彩る名文句が躍っている。マーメイドSの初代女王へシャイニングレーサーを導いた時、桜花賞レコード勝ちアラホウトクの名も並んでいる。レガシーワールドでジャパンカップを勝った時のもあるし、サッカーボーイの名も見える。“咲いた最多の118勝”には思わず笑った。悪乗りついでに“さあ河内音頭だ”も、成り行き上目をつむってやるしかない。

 心憎いのはミニチュア版にした挨拶状。角封筒の中に丁寧に畳み込まれていた。

謹啓 時下皆様にはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。さて、私儀(中略)つきましては、2000勝を記念してささやかながら記念品を作らせて戴きました。ご笑納いただければ幸いに存じます。時節の折りから皆様にはご自愛されまして、ますますご活躍下さいますよう末筆ながらお祈り申し上げます。敬具 平成13年10月吉日 中央競馬騎手 河内洋 各位様

 これまで記念品はいろいろ戴いてきたが、大金をかけなくても相手に喜ばれるものはあるものだ。俗でないところがいたく気に入った。彼にこんな洒落っ気があったとはねェ……。今日までついぞ気がつかなかった。

編集局長 坂本日出男

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