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編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
調教班・青木行雄






 

◆“調教班・青木行雄”

  青木行雄。大阪出身で35歳、独身。入社して12年がすぎた中堅社員である。坂路調教担当として熱心に馬を追いつづけるその観察眼には定評があり、大胆な攻めの予想は時として穴党ファンをうならせる。今回はそんな青木の1週間を取り上げて、同時に調教班の仕事ぶりも紹介しよう。

 午前5時に馬場開場となる夏場は3時45分に起床。歯磨きして顔を洗い、準備ができると出発。途中でコンビニに寄って朝食用のパンと飲み物を買い、4時半にはトレセン到着。坂路の調教スタンド記者席へ。水、木は5時から9時までの間、各馬の調教の動きを観察。ハロータイムや馬の姿が減る時間帯に朝食をとるだけで、馬場から競走馬の姿が消えるまで、一瞬たりとも馬から目を離さない。調教が終わると会社に戻り原稿作成。これが水、木の主な仕事だが、記憶があいまいな馬の調教は常設しているビデオカメラの映像を会社のモニターで再現して確認。この作業だけでも数時間を要す。区切りがつくと、今度は各馬の調教解説の作成。次には本紙担当者に各馬のデキの良否を報告。個人予想の検討をする頃はもう夕方だ。

 金、土の朝は直前気配の観察が主体。追い日は見るからにモタモタしていた馬がガラッと良くなったり、絶好の動きをした馬が翌日はゴトゴトになったり。生き物であるサラブレッドの気配は日々変化する。だからこそ継続して見ることが重要だ。

 土日の競馬開催日は開場時間が早い。早朝のうちに各馬のトレーニングを済ませないと、調教師、調教助手、厩務員といった関係者が競馬場へ移動できないのだ。そのために同時開催の中京競馬が行われる12月は馬場開場が早朝3時となり、調教班は2時台に起床してトレセンに駆けつけ、睡魔と闘いつつ馬の姿を追う。強行軍は朝だけではない。調教時間が終わると一旦は会社に戻り、そこから競馬場へ。現地に着くと新たな仕事が待ち受けている。レース経過(通過順位)をとる者、週報用の原稿を書く者、レース後のインタビューに出向く者とそれぞれが多忙。最終レースが終わる頃には疲労困憊だ。

 「グリーンチャンネルの仕事で日帰りで東京に行く日(金曜の夜)はほとんど寝ずに翌日の調教に。でも、朝起きるのがキツいと思ったことは一度もありません。調教班の魅力は馬の実績を気にせず自分の判断で印を打てること。この仕事をやっていてよかったなと思う瞬間は、外で食事をしたりしていて“あんたのお陰で馬券が取れたよ”と競馬ファンから礼をいわれたとき」

 日頃から寡黙にしてマイペースを守る青木行雄。どちらかというと不器用な人間だが、調教班としての過酷な仕事に全力投球する姿にはいつも感心させられる。いつだったかは忘れたが、ある日の夕方、会社に隣接する独身寮から猛ダッシュで編集局に飛び込んできた彼。寝呆け顔で周囲を見渡して「あれ?攻め馬は」とポツリ。朝の5時と夕方の5時を間違えていたのだ。その姿に社内は爆笑の渦だったが、そんな姿も人間味に溢れていて微笑ましい。結婚願望が強いと聞く彼も35歳。早朝用の気のきいた弁当を作ってくれて、寝呆けても優しく諭してくれる。そんな嫁さんを早く見つけろよ。


競馬ブック編集局員 村上和巳


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