編集員通信


〈 ところで皆さん 〉

 阪神競馬初日第7R(2)(4)、第8R(1)(2)(7)、第9R(1)(3)(5)(11)、第10R(1)、第12R(2)(9)。2日目第8R(1)(2)(3)(7)、第9R(1)(2)(3)、第10R(1)(2)(8)(9)、第12R(3)(4)(12)着。これ第4回阪神競馬の1週目に出走した500万、900万への降級馬の成績なんです。驚くべき好成績だと思いませんか。

〈ところで皆さん〉。わが社の編集にM氏という人がいます。仕事がら馬に詳しいのは当然として、自然科学、音楽、コンピューター。ありとあらゆる方面に精通した博識家なんです。が、唯一にして、最大の欠点があるんです。桁はずれの“馬券下手”。給料の大半、ボーナスの大半が馬券代として消えてしまいます。40代にして花の独身。だからこそできる訳で、もし結婚していれば、とっくに離婚されていることは間違いありません。
そんなM氏が、2日目の阪神競馬が終わった日曜の夜、ニッコニコ顔で机に向かっています。“どうしたん。えらい機嫌ええやんか。嫁はんでも決まったん”。思わず声をかけました。“馬券なんて簡単々々”。これが返ってきた答なんです。正直、耳を疑いました。私、“M氏は馬券で勝つことは絶対にない”という信念を持っていました。たとえ自分が負けた日でも、M氏の苦虫を噛みつぶしたような顔を見て、ホッとしたものなんです。そのM氏が馬券で快勝したとは、正に、青天の霹靂の思いでした。
“どのレース取ったん?”。“こお〜た(買った)レースぜ〜んぶ(全部)”。“………”、声が出ないとはこのことです。そして、その種明かしが、最初に書いた降級馬の活躍だったんです。ソレはオカシイと思われる方がおられるでしょう。初日の第7Rは降級馬が2、4着なんですから、どうころんでも取れない筈です。

ところが、M氏、この週はツイていたんです。ご贔屓のポリッシュセイラーという馬が出ていたんです。これがツキの始まりでした。ポリッシュから、降級馬2点と他に2点買って馬連2260円ゲット。第8Rは570円と配当は安かったのですが、3点張りですから文句は言えないでしょう。第9Rは降級馬の中でもナショナルスパイの実力が抜けているとの判断(プロらしいでしょ)で、この馬から。第10Rは降級馬は1頭。これから、シルシのついているとこへ6点。配当は1650円でした。第12Rも降級のゲイリーレディが抜けた存在と判断した(またまたプロらしい)とのこと。人気薄との1、2着で、オイシイ3170円。2日目の8、9、10Rは降級馬のボックスで、440円、3640円、1480円をバッチリ。これは分かります。でも、第12レースは降級馬が、3、4、12着。ヤッカミも混じって、“これはあかんかった筈や”と詰問しました。M氏は落ち着いたものです。“そんな時間、仕事が忙しいて馬券なんか買えるかいな”。

かくして、“こお〜たレースぜ〜んぶ当たった”んだそうです。どんなに不運な人でも、どんなに勝負弱い人でも、10年か、20年に1回ぐらいは、ビックリするような幸運に恵まれることがあります。M氏の阪神第1週はきっとそれだったんでしょう。しかし、M氏でさえ成功した馬券戦術に乗らない手はないでしょう。2週目に出てくる降級馬は私のために出てくるようなものです。今度は私が勝てる筈なんです。ただ、以前、トシ取った上司から、よく言われたんです。“アホの知恵はあとで出る”と。そうなるんでしょうかねえ……。結果はいずれご報告します。

(競馬ブック関西デスク・井戸本征彦)

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