編集員通信


“ボチボチ夏負け馬にご用心!!”

 盛夏になると、ドライコートに似た状態になる馬がいる。いわゆる“夏負け”と呼ばれるもので、症状は、顔面の眼の周囲、及び鼻梁側の部分の毛がハゲてツヤツヤと光り、汗が出なくなる。少し運動すると呼吸を弾ませるので、軽い運動しか出来なくなる。睾丸が小児の頭大にふくれ上がるのも特徴のひとつ。
 治療法に決定的な有効な方法はなく、休養させて涼しくなる時季まで待つことぐらい。立夏を過ぎると、日一日気温は上昇する。木陰に入ればまだ風が冷たいので、暑さを特別に意識しないが、追い切りを終えるとさすがに各馬相当の汗をかいている。中には、新陳代謝がスムーズにいかないものもいよう。何しろ馬の数も多いことだから……。それ等が夏負け予備軍だ。

 “夏負け”というのは、夏場に発症する病気の総称で、長時間高温、高湿度の場所にいて、体温が発散出来ない時に起こる熱射病や、夏風邪等もそこに含まれている。
 肌寒いぐらいの午前6時に開始される調教より、1時間ばかり前より既にウオーミングアップは始まっている。涼しい時間帯では動きもタイムも普段とさして変わりない。異常と受け取る人はまずいない。
 ところが、いざ競馬場に運ばれ、炎天下でレースするとなると動きが緩慢になるし、勝負どころからのいつもの踏ん張りが影を潜め、粘りもなくなってくる。そうした“どないしたんやろう?”と不審に思えるような負け方で終わる馬がボチボチ出始めるシーズンになった。

 中京戦になると、厩舎のコメントの中に“夏負け気味”というひと言が加わってくるだろうが、その時はもう遅い。とにかく今から、そのへんを疑ってかかるくらいでないと。取材記者はそのへんを突っ込んで念入りに聞きに回っている。外見では、初期の症状を見分けられない。食欲が落ちてきた、とか、担当厩務員でないと分からない部分を重点に。ご用心、ご用心。

編集局長 坂本日出男

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