編集員通信


“敗因のはっきりしない惨敗もある”

 京都大賞典でスペシャルウィークが惨敗した。武豊騎手のレース後のコメントは「良かったとは言えないが、追い切りの動き自体は決して悪くなかった。体もそう太く感じなかったし……。今日はちょっと分かりません(敗因が)」白井師の方は、余裕のあった馬体に原因のあったようなニュアンスの談話だった。春の天皇賞を10のデキとすれば、せいぜい七〜八分のデキぐらいにしか達していなかったと思う。昨年の京都新聞杯が4カ月半の放牧休養明けで出走して勝っている。

  秋の緒戦を迎えるにあたって、やらねばならぬことは既に学習済みで、陣営もある程度計算づくの調整だったはず。ただ、誤算だったのは放牧先の異常気象、高温による影響。スペシャルウィークは明らかにレース当日闘争心に欠けていた。3角の上り坂にかかるあたりから、早くもいつもの走りでなくなってきていた。毎度のことながらこの手の馬(GIホース及び、そのレースのメンバー中実績断然な馬)の休養明け緒戦の評価は難しい。太いとか、毛ヅヤがどうとか、動きがどうといった外見で判断出来るものは構わないが、闘争心のような内面までは見当がつかない。しかも、その精神面の要素が結果を大きく変えるだけに始末に負えない。

  よく使われる文句に“力の違いで何とか……”力の違いを具体的に数字で表し、何秒くらいタイム差があるか、誰も正確に答えられる人はいまい。あく迄も感覚的な表現なのだから。この曖昧さは年々歳々繰り返され、善きにつけ、悪しきにつけ、最後には“競馬に絶対はない”の一言で片付けられるご不満もおありでしょうが、この次のレースを見て判断して下さいと、相手に下駄を預ける。レース直後では、敗因のはっきりしないことがしばしばあるものだ。

編集局長 坂本日出男



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