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編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
再会






 

◆“再会”

 傘をさしても意味をなさない横殴りの雨。めったに着ることのないスーツが駐車場から一歩外に出た途端にビショ濡れになる。それでもなんとか午前7時半にたどり着けた伊丹空港。搭乗したのは8時をしばらく回ってからだったが、すぐに睡魔に襲われる。月曜朝は眠れるだけ眠る。普段からそんな日常を送っているから。

 「まもなく花巻空港に到着いたします」の機内アナウンスで目覚め、1時間以上も眠り続けていたことに気づく。空港からバスに乗り継いで1時間弱。オーロパーク(盛岡競馬場)に到着した。降り続けた雨はほとんど上がり、メインゲートをくぐり抜けると目の前に馬をイメージしたいくつものオブジェが並び、競馬場とは思えない美しい風景が広がる。

 G1の南部杯出走馬がパドックに姿を現す。いかにもダートの強豪といった逞しい肉体を誇示する馬が多いなか、いかにも繊細そうなキリッと締まった肢体のアドマイヤドンが登場。栗東から盛岡までの長距離遠征だったにもかかわらず、落ち着いていて馬体も細くない。私が厩舎取材班として栗東トレセンを駆け回っていた頃は、カイバ食いが細くて調教でも時として暴走。そんな若さばかりが目立っていたもの。1年10カ月ぶりに再会したドンは見違えるような大人の姿に成長していた。

 2コーナーのポケットからのスタートだった南部杯。仕掛けて難なく外目の3番手の位置を確保した安藤勝己が、そこでジワッと長手綱にして力を抜く。すぐにその仕草を理解したアドマイヤドンが気負いを捨てて伸びやかな走りに切り替える。この時点で南部杯の勝者は決まった。

 馬と人との文化の新たな拠点となるようにとの期待を込めて「黄金」を意味するラテン語の“ORO”、そして、人々の集う憩いの場になることを願って“PARK”と名づけたというこのオーロパーク。地方競馬が次々に廃止に追い込まれていくこの厳しい時代を乗り越えて、新たな馬事文化の発信地として深く根を下ろして欲しいものである。


競馬ブック編集局員 村上和巳


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