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編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
新馬戦






 

◆“新馬戦”

 舞台は珍しく秋に開催された中京競馬場。新馬戦で大きく出遅れた本命馬の姿に記者席はドッとどよめく。向こう正面からのスタートとなるとすぐに3コーナーのカーブにさしかかる中京コース。出遅れた馬はロスを承知で外を回らざるを得ない。しかも、このレースの距離は僅か1000メートル。あんな出遅れ方をして届くわけもないと諦めつつ双眼鏡で前の馬を追っていた私の視界に、外から豪快に伸びる大柄な栗毛馬が飛び込んできた。直線半ばで先行集団に取りついたその馬は、瞬時に抜け出して後続に1馬身1/4差をつける素晴らしい瞬発力で快勝。走破タイムの58秒1は堂々のレコード。ゴールインした瞬間は背筋がゾクッとするほどの迫力だった。その場面は10年以上も時が流れたいまでも鮮明に記憶に残っている。

 新馬戦という言葉からどんなことを連想するだろうか。“初々しさ”“出発点”“可能性”……、私の場合は1992年に皐月賞、ダービーの二冠を制した上述のミホノブルボンのデビュー戦を思い出す。30年も競馬を続けているのだから実際に見た新馬戦は数知れないが、好みとは別に衝撃の大きさという意味ではミホノブルボンの勝ちっぷりがいちばんだった。G1へつながるエリートロードともいえる新馬戦は、それぞれが新鮮であって、また楽しい。

 週刊ケイバブックでは開催が替わるごとにデビュー予定の有力新馬の紹介記事を東西で掲載している。調教班、厩舎取材班が協力して有力馬を絞り込むのだが、1、2週間後にデビューする馬の動向は把握しやすいが、3、4週後にデビューする馬となると、調教の絶対量が不足していることもあって評価が難解だった。今年の春から新馬戦が開催単位から1走だけに限定する週単位に変わったことでもあり、区切りの新年号から新馬紹介の記事を2週に一度の割合で掲載することにした。より精度の高い記事をとスタッフ一同が知恵を絞ったものであり、今後とも是非注目していただきたい。

 ちなみに、今年デビュー勝ちした新馬で個人的に注目しているのはブラックタイド(12月7日阪神デビュー、牡・池江泰郎厩舎)とダンスインザムード(12月20日中山デビュー、牝・藤沢和雄厩舎)の2頭。どちらもテレビ観戦ながら、胸騒ぎを覚える勝ち方だった。この2頭がそれぞれ三冠を達成すれば、苦節30年の私の競馬困窮人生が終わりを告げ、夢にまで見つづけた金満家への道が開けるのではないかと密かに期待しているのだが……。


競馬ブック編集局員 村上和巳


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