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今年初めての原稿更新。なのに緊張感のかけらもないのは例によって酔っ払っているからか、それとも8日間で4種類の新聞(当日版)を作成した疲れなのか。そのあたりについては自分でもよく分からないが、まあ、昨年同様にこの編集員通信で好き勝手なことを書ける幸せを噛み締めつつ、競馬の愉しさを少しでも読者の皆さんに紹介できればそれはそれでいいかなと考えている。
まずは祝福の言葉から。「特別模範騎手賞の受賞、おめでとう!」。
藤田伸二騎手の“年間制裁ゼロへの挑戦”が見事に成就。同騎手が史上三人目の特別模範騎手賞を受賞することになった。昨年の10月初めのこの欄でも紹介したが、年間30勝以上の勝ち星を挙げた騎手のなかで1年を通して制裁0点の騎手に与えられるのがこの“特別模範騎手賞”。過去には1993年の柴田政人騎手と1997年の河内洋騎手(どちらも現在は調教師)が達成しているだけ。つまり、現役騎手では誰ひとりとしてなしえていない素晴らしい記録を達成したのである。“フェアプレーの精神”は騎手としての基本であり、原点でもある。それを実践するには強靭な精神力と卓越した騎乗技術が必要不可欠でもあるのだ。
「最近はレース前に妙に緊張するようになった。朝の未勝利なんかでも、ちょっと気の悪い馬に乗る機会があると、大丈夫かなってあれこれ考える(苦笑)。ダービーの有力馬に乗っても緊張なんかまずしなかった。なのにこの始末。俺らしくないぞって自分に言い聞かせてはいるんだけど、思うようにいかない。でも、ここまできたからには何とか達成するつもりでいる」
これは暮れの阪神が始まる直前に会った時の藤田騎手の台詞。プレッシャーとの戦いの苦しさは私なりに理解できた。勝敗を度外視してただ馬場を1周してくるだけならことは簡単だが、馬の能力を最大限に引き出しつつ勝負に挑むのが騎手の仕事。ゲートが開けば無意識のうちにも馬の首根っこを押っつけたりステッキで叩いたり。レースそのものを理解していない若駒のなかには、バテて走るのをやめようとする馬もいれば、内外へフラついてまともに走らない馬もいる。跨っているだけで勝てるような馬はまずいない。全レースが戦いなのである。それからの土日はというと、見守るだけの私でも、レース終了後に審議ランプがつくとヒヤヒヤした。
805戦して121勝。これが2004年の藤田伸二の全成績(JRA)である。騎乗回数も勝ち鞍も前述の柴田政人、河内洋を大幅に上回る素晴らしい成績を残しながら、なおかつ年間制裁ゼロを達成した彼に対して心から拍手を送りたい。この件については年明けのスポーツ紙等でも紹介されたが、三面記事のような地味な扱いになっているのが残念だった。認識の違いといえばそれまでだが、個人的にはもっと大々的に取り上げられて賞賛されるべき偉業だと思っている。そういった意味からも、藤田伸二騎手にはいままで以上にフェアプレーにこだわり続けてアピールして欲しいものだ。
今年も伸二から年賀状をもらった。他のものと比べるとかなり分厚かったので不思議に思って表裏をたしかめつつ目を通したら、なんと同じ年賀状がくっついていて、途中でパラリとはがれて二枚になった。いつもと同じ家族の微笑ましい写真が印刷された年賀状が二枚。最初は間違い探しかなと横に並べて眺めてみたりしたが、それらしい個所はみつからなかった。意外に茶目っ気のある彼のことだから、ひょっとすると“今年は2004年の二倍は活躍するから見といてや!”というメッセージが込められているのかも知れない。
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競馬ブック編集局員 村上和巳
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