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競馬ブックではG1レースの行われる週(2歳G1を除く)にタブロイド版16ページの増刊号(地域限定)を出している。その増刊号に『血統をよむ』というタイトルの水野隆弘のコラムがある。上記の文章は宝塚記念特集のなかから抜粋したものだが、最初に目を通して思わず吹き出した。有力馬の血統分析をしつつそのレースを解明するこのコラム。サラブレッドの長い歴史を遡りつつ欧米の競馬事情をも引用しながら勝ち馬を推理していくアカデミックな文章構成のなかで、突然躍り出てきた不似合いとも思える○○のふた文字。意表をつかれて笑い転げてしまった。
弊社の校正部隊は大半が女性たち。当日版、週報、四季報、携帯サイト、インターネット関連と多種多様の原稿が彼女たちの前に山積みされるが、その多くはゲラが上がった段階でふたりひと組での読み合わせが行われる。つまり、ひとりがゲラを読み上げ、もうひとりが活字に目を通して原稿にミスがないか確認する校正作業が行われるのである。一方が声を出して○○を“金○”と音声で読み上げ、残る一方がゲラの“○玉”という文字を目で確認する。そのときふたりは業務に忠実に淡々と原稿を読み終えたのだろうか、それとも……。あれこれ考えること自体がセクハラなので怪しげな推理はここまでにするとして、いかにもヤツらしい原稿だなと思った。
水野隆弘、三重県出身39歳。当日版「この一頭・血統から推す」や増刊版「血統をよむ」のコラムを書きつつ、週報では「新馬血統評価」を担当。これ以外にも「海外競馬ニュース」その他の週報の原稿の編集もこなすオールラウンダーで、合同フリーハンデの競馬ブック代表ハンディキャッパーでもある。ここまで書いただけでも頭が痛くなりそうなのに、Eコースの採時も担当していて毎朝トレセンに出向いてもいるのだから、まさに八面六臂の活躍であり、その頑張りには頭が下がる。
感情の起伏が少ない落ち着いた雰囲気の持ち主である水野。例えるならば大学の研究室あたりが似合いそうな学者肌のタイプである。ところが、そんなヤツが時として意外な一面を見せるから面白い。入社して数年が経過した頃に、ある先輩と私と彼で酒を飲みに行った。途中からカラオケ大会になったのだが、そのときに彼が歌ったのは、な、なんと『セーラー服と機関銃』。当時は超人気アイドルとして活躍していた薬師丸ひろ子の主演映画の主題歌だったのだ。それも、真面目にして淡々とした表情で最後まで歌い切るのだから、見守る我々はもう抱腹絶倒。その選曲の妙に思わず落涙した。堅物に見える彼だが意外にも周囲を笑わせるのが好きな人間でもあるのだ。
「あまり人間付き合いは得意じゃない方。机に向かって好きなことをコツコツやるのは全然苦になりません。どちらかというとオタクみたいなタイプです」
そう自己分析する水野だが、本人が好むと好まざるとにかかわらずその周囲には人が集まる。海外のセリに出かける調教師が資料片手にどの馬に注目すべきか相談にきたり、調教の合い間に自分が跨った馬の攻め時計を聞きにくる調教助手がいたり。長く付き合えば彼がどんな人間なのかそれぞれが理解しているのだ。かくいう私も競馬ファンからの難解な質問電話で返答に窮していたときに何度彼に助けてもらったことか。つまり、即答できないような質問攻勢に浮き足立っている私を見て、隣席の彼が関連の資料を手渡してくれたりメモで答えを走り書きしてくれたりするのだ。その優しさに感謝すると同時にジャンルを問わぬ彼の豊富な知識には驚かされてばかりいる。
隣同士の席に坐る人間としてひと言。最近は疲れが見え隠れしているぞ、水野。ひとりでなんでも全部背負おうとせず、無理なことは無理だとちゃんと自己主張しろよ。もうすぐ君も40歳、若くはないんだからな。それと、もうひと言。私個人は嫌いじゃないけど、“キ○タ○”みたいな直接的な表現はほどほどにした方がいいんじゃないか(笑)。
なお、G1増刊号を発売していない地域に住んでいて水野隆弘の『血統をよむ』に関心のある方は、オフィシャルウェブサイト『合同フリーハンデ』(http://www11.plala.or.jp/godofh/)をご覧ください。 競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP