・カルストンライトオ ・カフェボストニアン ・スピニングノアール ・マルターズホーク
・スムースバリトン ・スズノマーチ ・マチカネメニモミヨ ・ブルートルネード ・サイレントディール ・オペラシチー ・エリモハリアー ・ホオキパウェーブ
ご存知と思うが、週末に開催される中央競馬に出走する馬たちは馬運車という専用運搬車でトレセンからそれぞれが出走予定を組んでいる競馬場に移動する。関西馬が京都、阪神、中京の各競馬場でレースに使う場合は当日の早朝に栗東トレセンを出発して目的地に向かう。これがいわゆる当日輸送であり、関西馬が小倉、東京、中山、新潟、福島といった輸送時間のかかる競馬場に向かう場合はレースの1日前に移動するケースが多い。つまり、出走予定日の前日に競馬場に入厩して現地に一泊する。このパターンは前日輸送と呼ばれる。つまり、トレセンから各競馬場に移動する所要時間の長短によって輸送方法を変えているのである。競走馬が輸送で消耗することなくベストの状態でレースに出走するための配慮なのだが、その輸送時間も道路状況に大きく左右されるのはいうまでもない。
8月13、14日に小倉競馬に出走する予定の馬はまともに帰省ラッシュのあおりを食う。普段だと8時間ほどで小倉まで移動できるのだが、渋滞に巻き込まれるとその倍ほどの時間を要しても不思議ないのだ。馬運車の運転手は急発進、急ブレーキを使わないように気を配るのはもちろんのこと、緩急をつけずになるべく同じ速度で走るように努めるのが常だが、輸送慣れした古馬でも長く馬運車に乗せられていると情緒不安定になったり食欲不振に陥ったりする。ましてキャリアの浅い若駒のなかには馬運車に乗るのを嫌がるだけでなく、調教の最中に他の厩舎へ向かう馬運車の姿を見ただけで硬直(恐怖感&拒否反応)する馬さえいる。そんな馬たちにとって十数時間も要する小倉までの移動は苦痛以外のなにものでもない。そこで、厩舎スタッフは対策を練る。通常だと金、土に移動するローテーションを繰り上げて1日早い木、金に移動したり、トレセンの出発時間を渋滞が少ない深夜に切り替えたり。それでも不安のある馬はこの週の出走を断念することもある。道路事情と競走馬の移動は切っても切れない関係にあるのだ。
我々競馬マスコミの場合はどうかというと、当然ながら競走馬ほど交通渋滞の影響を受けない。お盆のこの時期は小倉開催と日程が決まっているため、車で移動することがまずないのだ。ただ、JRを利用するため、乗車率250パーセントの新幹線に乗って小倉まで立ちっぱなしなんてこともたまにはある。同業者で几帳面な人間(これが普通なのかも)は早めに手を回して往復の指定席券を押さえるが、現場時代の私は計画性皆無のなりゆき任せ。前もってチケットを予約してその時間に拘束されつつ行動するのが苦痛なタイプでもあった。競馬を終えて小倉から帰る際も同様で、奇跡的に馬券で大勝利をおさめたときはグリーン車で、そうでないほとんどの場合は飛び込みで空いている席を探した。食堂車があった10年ほど前までは同じ電車に乗った調教師や騎手たちと小倉から京都まで飲み通しなんてこともしょっちゅうで、チケットの有無なんてどうでもいいことだった。流れ次第ではそのまま京都のネオン街になだれ込むなんてこともあったのだが、いまから考えるとよくそんなことを続けていたものだと自分自身で呆れ果てている。
8月13、14日の競馬開催もなんとか無事に終了した。例年考えていることではあるが、猛暑と交通事情の悪化に悩まされるこの時期の開催を強行する必要があるのかどうか。世間が慌しく動き回り、人の心にも余裕がなくなりがちなこのお盆ぐらいはノンビリ休息することも必要ではないかと思う。なにひとつアクションを起こさずに普段のままでこの週末を過ごした私だったが、それにもかかわらず例年以上に倦怠感が残ったのはこの夏でまたひとつ年齢を積み重ねたせいなのかもしれない。 競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP