このコラムの原稿でも書こうかとパソコンの電源を入れてみるが、休日に気持ちが乗ることなどそうはない。時間に余裕があることも手伝って生来の横着さや怠け癖が待ってましたと顔を出す。こんな状態で自分自身の気持ちにステッキを入れて奮い立たせようとしても結果が出るはずがない。BGMにFMを流しながらまずはニュース、スポーツ記事、競馬関連記事、知人ブログなどを流し読みし、その合い間に馴染みの曲が流れると聴き入ったりしてかなりの時間が過ぎ去っていく。たいがいはそうやって無為に一日を過ごすのだが、月火や原稿更新日の水曜日に予定が重なっている場合はそうもいかない。必然性のないだらけた行為をある程度繰り返した段階で重い腰を上げざるを得ないのだが、この27、28日は予定が一切ない完全休日。水曜日も比較的時間に余裕があるために当然のように怠惰に過ごした。世間はゴールデンウィークで十数連休なんて羨ましい人間もいるのだからこんな過ごし方もありだろう。そうはいいながらも結局は競馬のことをあれこれ考えていた。
間もなく4月が終わる。振り返ると1、2月は過去に例がないほど慌しかった。函館開催の代替として1月に中京開催が組み込まれたことがその原因のひとつだが、JRAも乱暴な決断をしたものである。ただでさえ筋肉が硬くなりがちな冬場は調整が難しく、馬場の凍結や降雪による調教時間の変更などでルーティンワークをこなせない馬が増える。細やかな調整ができないぶん夏場より故障馬が増えるのは当然の結果でもある。更に大雪に見舞われて月曜開催にでもなれば、ファンはもちろんのこと馬や関係者にも多大な負担をかけることになる。今年の1月は天気予報や高速道路情報と睨めっこしながら無事に開催されるかどうか気遣ったが、関西圏は過去に記憶にないほど降雪が少なく、午後乗りや土日の開催中止が一度もなかった。極めてスムーズに日程が消化できたのは喜ばしいことだが、あくまで結果オーライだったもの。不確定要素の多さに悩まされるのは馬券の推理だけで十分であり、どんな事情があるにしても今後この時期の中京開催は避けて欲しい。
最近になって確実に増えていると実感するのが馬券の買い間違い。JRAは例年より早く“プチ薄暮開催”に突入したが、これに伴ってレース番組の入れ替えと発走時間の一部変更を実施している。更にややこしいのは東西によって番組が違うことで、これが一層の混乱を招いている。競馬ブック編集部には毎週途切れることなく「西のメインをパソコンで買って当たったと喜んだら11レースの平場になっていた。この番組編成、なんとかならんかね」「スケジュール調整してギリギリ間に合って場外で馬券を買ったらレース間違い。判っているつもりでも慌てるとついつい失敗してしまう」といった苦情が届けられている。そのほとんどが年配の方なのは11レースがメインと体に染みついているからなのだろうが、話をうかがうと気の毒になってくる。
フランスあたりでもそれなりの成果を挙げていると聞く薄暮の導入は競馬人気の停滞を打破するための施策のひとつとして有効なのだろうが、それに伴う関西地区のレース入れ替えについては正直なところ感心しない。メインレースのあとに条件戦をはさんで、その後に最終レースを行う新たな番組には首を傾げざるを得ないのだ。他のスポーツや一般のイベントでも判るように本来は最もクオリティの高いものをメインとして最後に持ってくるのが興行の基本であり、競技の素晴らしさを目の当たりにしてその余韻を楽しめたファンこそがリピーターとして定着していくのがあるべき姿。桜花賞のブエナビスタの衝撃的な強さを目撃した後にふたレースを消化することに意味があるのかどうか。未曾有とも百年に一度ともいわれる世界同時不況が続くいまの時代に売り上げ減を最小限に食い止めるのは至難だとは思うが、だからといって既存のファンの懐ばかりを狙うのではなく、なによりも大事な新たなファンの獲得に向けてより幅広い広報活動に努めるべきではないか。
競馬ブック編集局員 村上和巳