『日記の功罪』
昨年の10月に弊社ブックログの運営を外部に委託することになりました。おかげで、と言うべきか、そのせいで、と言うべきなのか。他人様が書いたブログを読む機会が、以前よりも確実に増えました。 ブログについては、まあ自分はエッセイ風な物として利用すりゃいいやと考えて、今もそのようなスタンスで書いているわけですが、ネット用語として“ブログ”という単語を初めて耳にした時、“日記のようなもの”と聞いて驚いた記憶があります。日記って、人に読ませるものなのか?と思ったから。無論、今でもそう思ってますが、要するにこのところ、他人様の日記を読む機会が増えたってことになるんでしょうか。
格言、金言、箴言といった、いわゆる人生訓は数多くありますが、ごく身近に、直接的に実益につながりそうな代表的な物のひとつに、 『継続は力なり』 があります。 自分のことで言うと、力になっているのかどうかはさておき、結構長い間続けている実感があるのが、この日記らしき物を書く行為。“らしき物”と書いたのは、備忘録的にメモを残してるだけの時も少なくないから。つまり、それほど大層な中身のある代物ではありません。
きっかけは、大学受験の際に自宅浪人生として過ごしたこと。宅浪生は自分の勉強の進捗具合が掴みにくく、スケジュールの確認のためというか、まあ必要に駆られて自分の行動パターンを記しておく作業を始めたわけです。それこそ大学ノートに、簡単なメモ書きみたいにして。 大学に入ってからも、卓上日めくりカレンダーなどに、その日の事をメモすることは続けてました。都合の悪いことは書いてなかったような気もしますが、じゃあ何のために書き残しているのか、と問われると、それがよくわからないのです。
競馬ブックに入社後は、しばらくの間、休止してました。と言うのは、劇的に環境が変わって日記を書く余裕がなかったことがひとつ。それと我が社の競馬手帳で、いろんなことを済ませるようになったこともありましたか。 それを再スタートした最大の原因はただひとつ。子供です。成長記録みたいな物を書いて残しておこうと思ったわけです。 でも、ある程度大きくなると、その当初の目的はどうでもよくなるのですが、続けてるんですね、いまだに。飽きもせず。今や“習慣”になっちゃってます。その日のうちに書けないこともありますが、後日になっても、とにかく何か記しておかないと、どうにも気持ちの収まりが悪い…。
日記の功罪については、“功”の方が多く語られてきたように思います。そんな中で白洲正子が“罪”の方について「日記の類は書かない。後で読み返した時に、若かった頃の愚かさ、馬鹿さ加減を突きつけられるようで嫌になるから」みたいなことを自伝に書いてます。これ、書き続けている人間として、なるほどなあと思わされる部分があります。 メモ形式ではないことを書いて、それを後で読み返しますね。確かに、「こんなふうに考えていたのか」などと、愕然とさせられることが少なくありません。若さゆえの馬鹿さ加減になるかどうかはわかりませんが、「ちょっと浅慮なんじゃない?」と当時の自分に詰問したくなったりします。ただ一方で、案外ちょっとだけ楽しかったりもして。 過去を振り返って“後悔”するのはよろしくありません。が、“反省”して今後に生かそうとするのは悪くないんじゃないか、なんて思うので。 “反省”なんかしちゃダメ、という意見も聞いたことはあります。反省のために、常に後ろ向きになっていては拙いってことでしょうか。せっかく過去から何かを学ぼうとしているのに、逆効果になりかねないですもんね。 まあ、そのあたりの微妙な心理状態を克服するには、経験としてこなすしかないのかもしれません。
こんなことを考えるようになったのは、日記を読み返してあまりロクなことがない年齢になってきたからでしょうか。てことはやっぱり、読み返すのは避けるべき、ですか? しかし、基本的に日記を読み返す行為を避けた方がいいのだとすると、人は何故に日記を書き続けるんでしょう。いっそ書くのをヤメてしまえば、悩むことは一切なくなるのに…。 私の場合、書き終えている日記帳が、ざっと20冊くらいになってますが、これから更に増えるとなると保管場所にも困るわけで。3年用、5年用といった日記帳もありますが、どうも苦手というか、しっくりこない。便利なのはわかりますが、あれこそ読み返し用として機能しませんか。
何故、日記を書き続けるのか。今のところ、その答えは出せそうにありません。 年明け第1弾のコラムで、結論のない中身を書いてしまいました。このことも、反省材料として、ちゃんと記しておきますので。 ん? 読み返さないとなると、記しておく意味がないのか…。でも何年か後に読み返した時、「馬鹿なことしちゃったんだな」とうんざりする…。堂々巡りですね。 そういうわけで、ネット上に公開されるブログを日記として使うことは、自分にはとうていできそうもないですが、いろいろな形を参考にさせて頂くことによって、上の答えを探していきたいと思っています。とりあえずは、日記を書くことによって自分の在り方を見つめながら。
美浦編集局 和田章郎