『2014ダービーへの戦いは始まっている』
ダービーが終わるとすぐにJRAの2歳戦が始まるようになったのは昨年から。ダービーの余韻を楽しむ間もなく、何ともせわしい。1995年までは中スポ賞4歳Sが中京の1800mで行われていて、1988年のサッカーボーイの追い込みなどは深く印象に残る。そうはいっても、今のように競馬が厳しくなってくると、残念ダービー的なレースはくたびれたところから更に搾り取るような面もあって良いこととはいえず、ラジオNIKKEI賞がひとつあれば十分だとも考えられる。いずれにせよ新しい世代の戦いはすでに今週から始まるわけで、栗東で90頭近く、美浦で100頭以上の2歳馬が程度の差はあれ時計を出しているので、最初からそれなりの頭数は揃いそうだ。ここで、この2歳世代の種付け時点での勢力図をざっくりと見てみよう(文末に表があります)。
200頭以上の牝馬を集めたのはトップのキングカメハメハをはじめ、ゼンノロブロイ、ディープインパクトなど10頭。トップ10だけで2203頭の牝馬を集めていて、この年種付けした北海道のサラ系の繁殖牝馬が9429頭だから、その23%をカバーしたことになる。表には102頭のホワイトマズルまで100頭以上の種付けをこなしたものをすべて書き出したが、この38頭で全体の62%を占めている。2010年に北海道で種付け予定のあった種牡馬は266頭いたので、その7分の1に牝馬全体の6割が集中していることになる。( )内に示した数字はトレセン入厩や産地馬体検査などでJRAの競走馬名登録の済んだもので、東西合わせて全体で868頭(5月22日現在)。それら、いわば即戦力の7割近い595頭もオーバー100種牡馬で占められていることになる。
2009年の暮れからクラシックシーズンにかけて産駒が活躍した種牡馬はキングカメハメハ(アパパネ=阪神JFと春2冠、ローズキングダム=朝日杯FS)、ネオユニヴァース(ヴィクトワールピサ=ラジオNIKKEI杯2歳Sと皐月賞)そして、ゼンノロブロイ(アニメイトバイオ、コスモネモシン、ペルーサ、サンテミリオン)で、これらは揃って200頭超えの大台に乗っている。2009年の秋にスリーロールスが菊花賞に勝ったベテラン・ダンスインザダークも前年比+21頭として、3年ぶりに100頭サイアーの座に返り咲いた。このように産駒の活躍が牝馬の質や量に反映されるのは確かなので、種牡馬の活躍に4年周期説があるのはもっともなこと。キングカメハメハ、ゼンノロブロイには大きな反攻の世代となるかもしれない。ただ、たとえばアンライバルドとロジユニヴァースの2冠に至った成功を受けて251頭の牝馬を集めたネオユニヴァースが、現3歳世代からは未だ重賞勝ち馬現れず。一概に言えない部分もある。
ディープインパクトは前年より48頭増の219頭に種付けしている。3年目で種付け頭数が200頭を割り、実際に弥生賞のカミノタサハラまで重賞勝ちがなかった現3歳世代でも、クラシックが終わってみれば桜花賞では1、2着を占めて3連覇、ダービーも連覇を達成した。4年目を迎えたこの世代は初期・中期調教のノウハウも蓄積されているはずなので、いったいどれだけの活躍を見せるのでしょうか。競走馬名登録数では現時点でのキングカメハメハ46頭の半分を下回る20頭とトップ4では最少。これも、クラシックに照準を合わせてゆっくり仕上げる傾向を物語るものかもしれない。
新種牡馬(※印)では天皇賞(秋)、マイルチャンピオンシップを連勝した印象が強いままに種牡馬入りしたカンパニーがトップの139頭を集めている。それに加えてサンデーサイレンス直仔の有馬記念馬マツリダゴッホ、欧・米最優秀2歳馬ヨハネスブルグ、ダービー馬ディープスカイ、BCターフ連覇のコンデュイットの5頭がオーバー100となった。週刊競馬ブックで来週(6/3発売号)から恒例ファーストクロップサイアー名鑑(サラブレッド血統センター・藤井正弘)の連載が始まるので、そちらもどうぞお楽しみに!
【2010年 種付け頭数100頭以上の種牡馬】 種付け頭数 種牡馬(競走馬名登録数) 266 キングカメハメハ(46) 254 ゼンノロブロイ(26) 219 ディープインパクト(20) 215 ネオユニヴァース(25) 212 サウスヴィグラスUSA(20) 211 ハーツクライ(28) 209 クロフネUSA(17) 207 マンハッタンカフェ(24) 207 ゴールドアリュール(16) 203 フジキセキ(22) 183 シンボリクリスエスUSA(26) 175 ステイゴールド(22) 164 ダイワメジャー(21) 161 プリサイスエンドUSA(14) 157 スウェプトオーヴァーボードUSA(14) 153 チチカステナンゴFR(23) 144 スペシャルウィーク(16) 143 ブラックタイド(14) 139 カンパニー(12)※ 135 アドマイヤジャパン(15) 133 ジャングルポケット(18) 128 マツリダゴッホ(9)※ 127 サムライハート(6) 126 タニノギムレット(15) 126 アドマイヤムーン(11) 124 アグネスデジタルUSA(4) 117 ヨハネスブルグUSA(13)※ 116 サクラバクシンオー(19) 116 ディープスカイ(7)※ 111 コンデュイットIRE(11)※ 111 メイショウサムソン(6) 110 タイキシャトルUSA(8) 110 フォーティナイナーズサンUSA(7) 109 ダンスインザダーク(10) 105 リンカーン(4) 104 フレンチデピュティUSA(7) 103 メイショウボーラー(11) 102 ホワイトマズルGB(8)
栗東編集局 水野隆弘