『ファンの願い』
「有馬記念の売り上げは下がりましたが、3日間トータルではいい数字を残せたので、そういった意味では成功だと思います」 10月21日、大阪市北区にあるJRA関西広報室で行われた「2014年開催日割及び重賞日程の説明会」での質疑応答で、2012年暮れに敢行された3日開催について、「厩舎関係者や記者の方たちから、『有馬記念の次の日に競馬なんて』、『1年の締めくくりは有馬記念にしてほしい』などたくさんの非難の声がありましたが」と前置きしたうえで、JRAは上記のように回答した。2014年度のフィナーレが有馬記念となったのは、祝日が重ならない暦だから。この先もおそらく有馬記念の翌日に競馬が施行されるケースはあるだろう。 JRAは近年、売り上げを伸ばす目的で、祝日を利用した3日間競馬、ローカル場開催の縮小を行っており、重賞・G1の増設もその一環と思われるが、長いスパンで見たときに、果たしてそれは有効なのかと不安に感じる。ローカル縮小は競馬ファンの裾野を広げる行為と相反しているように思うし、重賞・G1の増設とて限りなく使える手ではない。祝日を利用した3日間開催は大いに結構と思うが、暮れの有馬記念の翌日にも開催されるとなるとハナシは別で、競馬ファンは体内時計が狂い、競馬ファン同士の「有馬記念で1年が終わったねえ」という一体感がなくなり、粋でない。―――思うに、「損して得取れ」のゆとりがないのだろう。今の世の中、これはJRAに限ったことではない。すぐに数字に表れなければならないのだ。
では、国内で何が盛り上がるかを考える。現在、集客力があるのはオルフェーヴル、キズナ、ジェンティルドンナ、ゴールドシップ、エピファネイアか。これにメイショウマンボ、ロゴタイプ、アユサン(ロゴタイプ、アユサンは休養中)あたりが加わればオールスターだが、たとえ、すべてが稼働している状況でも、路線が多様化した昨今、これらが一堂に会することはないだろう。オルフェーヴル、キズナ、ジェンティルドンナ、ゴールドシップ、エピファネイアがこの秋同じレースに出走する可能性も低い。第一、日本を代表する歴史的名馬であり最も集客力のあるオルフェーヴルが今年日本で1走しかしていない(宝塚記念は肺出血で回避)のは残念なことだ。ファン投票で出走馬を決定するグランプリレースは名ばかりで完全に空洞化し、近年、日本国内ではオールスターと呼べるレースがない。世界の頂点に立ってほしい、凱旋門賞、ドバイワールドカップに参戦してほしい。しかし、いずれ世界の頂点に立ったとして、そのあとにどうなのか。未来永劫国内G1<海外G1(なかでも凱旋門賞)の図式でいいのだろうか。海外の大レースと折り合いをつけながらもなお、国内で最強馬が集う絶対的国際G1が春と秋の年2回、存在してほしい、と贅沢に思う。
……秋は菊花賞のあと、凱旋門賞帰りでも余裕をもって参戦できる日程でないと。でも、チャンピオン決定戦だとトリッキーな中山より広い東京のイメージだよな〜。じゃ、秋の連続開催後半の東京と中山入れ替える?? えー、1年の締めくくりがジャパンカップになっちゃうじゃん。―――春はどうなんかね。天皇賞・春の3200mはチャンピオンディスタンスでないし、宝塚記念は気候が悪いよ。気温も湿度も高くて馬に厳し過ぎる、2011年なんて28℃で湿度77%だったよ、今年も湿度80%もあったし(気象庁:神戸の記録)。それなら宝塚記念を前倒しして気候のいい日本ダービーの日に同時開催とか。え、京都で施行? ドバイ帰りの日程もキツくなるか……。JRAさん、いいようによろしくお願いします。
栗東編集局 山田理子