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競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
JRAのアンカツ誕生

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◆JRAのアンカツ誕生

 『連絡を受けるまではドキドキして……(笑い)、柄になく緊張してたみたいです』

 2月13日午前10時過ぎ。JRAから届いた騎手試験合格者名簿で彼の名前を確認して、すぐに祝福の電話を入れた。待たされ続けたこの数年、骨折して入院していた時期もあった。そんな数え切れぬ苦労を乗り越えて掴んだ中央競馬への移籍。受話器越しの声が弾んでいるのがよく判った。

 安藤勝己騎手の魅力といえば、真っ先に挙げられるのは馬の能力を極限まで引き出す技術があるということ。それまでは叩いても押っつけても前へ行けなかったズブい馬が、彼が跨るとポンとハナに立つ。また、過去に直線で前の馬を交わしたことがないような根性のかけらもなかった馬が、直線を向くと馬群をこじ開けてグイグイ伸びてくる。魔法とも思えるそんな衝撃的な場面を、いったい幾度目撃したことか。そんなアンカツの姿がいつも中央で見られるのだ。素晴らしいことだと思う。

 グラス片手に語り合う機会が何度かあった私は、安藤勝己という地方騎手が、地位や名誉、そして金銭といった私利私欲にこだわって中央をめざしたのではないことを痛いほど知っている。「競馬に中央と地方があること自体がおかしい」と正論を吐き、「中央で乗れれば、騎手としての自分がもう少しうまくなれるんじゃないか」と漏らしてもいた。つまり、自身の内なる騎手道を極限まで極め、彼の騎手人生を完結させるための舞台は、中央にしかなかったのだと思う。

 中央と地方にあった壁に風穴はあけられた。しかし、ダブル免許問題を筆頭に、まだまだ問題は山積されたままだ。日本馬が世界をめざす時代に、古い垣根なんていらない。我々競馬ファンの思いはただひとつ。世界に通用する強い馬を見たい。そして、馬の能力を極限まで引き出せる騎手を見たい。ただ、それだけのことなのだから。


競馬ブック編集局員 村上和巳


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