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編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
小倉閉幕






 

◆“小倉閉幕”

 現場で厩舎取材を担当していた頃、夏は必ず小倉か北海道へ出張していた。それも最低で1カ月、長いときは丸4カ月ものホテル住まい。当然のなり行きとして、食事をしたり珈琲を飲んだりする手頃な店を探し、気持ちよく酔える空間を探す。その地域のタウン情報誌みたいなもので調べはするが、なかなかいい場所がみつからない。やむなく、冒険承知で知らない店に飛び込む。それはそれで刺激的だが、出るときはどっと疲れることが多かった。

 初めて暖簾をくぐった店に何度か通うようになると、避けて通れないのが店側からの「お仕事は?」という問いかけ。職種を明かしても構わないが、オフにあれこれ仕事の話をするのも億劫。それでいつも「遊び人」と答えていた。すると、職種についてあれこれ詮索されるのだが、過去に一番多かったのが「高校教師」で、教科は音楽とか美術系。どうせなら正統派の数学や国語の教師に間違われたかったが、人相風体が明らかに軟弱かつ軽薄。そこまでの重みはなかったようだ。秀逸だったのは「遠洋航路の船乗り」という推理。色黒で夏季限定でしか登場しないというのがその理由。しばらくはそれで通した。他にも、「経営状態を調査にきた税務署員」とか、「ローカルラジオ局のアナウンサー」と続き、朝早いことから「新聞販売店勤務」や「パン屋さんの職人」という声もあったが、『胡散臭い人物』と映ったのは間違いないようだ。

 8月23、24日と小倉に行ってきた。23日の夜に小倉へ到着し、一軒目の洋食屋さんでは船乗りを演じ、素性を知られている二軒目のピアノバーでは有体に過ごした。10年来の飲み仲間・Kが自分のコラムで『日本でいちばん好きなバー』と書いていた『なしか』には、もう20年近くも通っている。黒人の声帯を持つマスター(ヴォーカル&パーカッション)と外れ馬券好きのその弟(ピアノ)のライヴは最高。深夜まで飲んで語って、そして泥酔した。

 日曜日の朝はほとんど腑抜け状態だったが、習慣とは恐ろしいもの。競馬場のゲートをくぐるとシャキッとして、それなりに仕事は処理できた。馬券の成績は芳しくなかったが、一年ぶりの小倉競馬場は懐かしく、またたく間に一日が終わった。そんな小倉開催もいよいよ最終週。どんな2歳チャンプが誕生するのか楽しみにしつつ、来年の夏もひと晩限りの船乗りになるつもりでいる。


競馬ブック編集局員 村上和巳


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