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編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
阪神優勝






 

◆“阪神優勝”

 この原稿を書いている間(13日夜)にも阪神タイガースの優勝が秒読みとなっていて、周囲の虎キチはソワソワ。なにせ18年ぶりのこと、そのファン心理は痛いほどに理解できる。私自身は数十年来の隠れ阪神ファンで、アンチ巨人。それだけに、今年のプロ野球には十分に堪能させてもらっている。

 昔から巨人は嫌いだった。人気球団の驕りが随所に感じられるのと、不似合いとも思えるエリート意識が選手間に蔓延しているのが嫌いな理由。FA制度が導入されてからは他球団の主力選手を集め放題だし、自由獲得枠ができてからはドラフト制度までを形骸化させてしまった巨人。レアル・マドリード(サッカー)、ニューヨーク・ヤンキース(米メジャー)に代表されるように、資金力に任せて著名選手を集める手法は、こと興行としては成立すると思っている。実際、ヤンキースの衛星中継は頻繁に見ているし、スペインリーグのサッカー観戦も大好き。ただ、真剣にそのチームを応援できるかとなると、話は別。

 もし、日本の競馬が外国産馬だけで行われるとしたら、それはそれで魅力的だが、私個人とすれば、いまほど競馬に熱中できなくなる。生産があって育成がある。そんな過程を経て誕生したサラブレッドだからこそ、注目し、肩入れするのである。外国産馬だけの競馬は、興行としては認めても、その背景にある文化の匂いが伝わってこない。生産なくして文化なし―私自身はそんな思いで競馬を見ていたい。強い馬は強く、速い馬は速い。そんな馬たちの存在は魅力的だが、祖母の現役時代の記憶があり、母の切ない思い出がある。そんな血を受け継いだ子供たちの活躍ほど嬉しく、感情移入できるものはない。その背景に生産者と馬たちの苦悩の歴史があるからこそ、競馬はひとの心を夢中にさせる。

 阪神タイガースもFAで何人かの選手を集めた。それはそれで認めるが、チームカラーが一変するほどのレベルではない。そして、資金力に任せた強引な引き抜きはしていない。新人の発掘、そして若手の育成に努めた結果として、今年の素晴らしい成績が残せたのではないか。ここ数日は、様々なグループから阪神優勝祝賀会への参加要請がきた。宴会好きの私のこと、本来なら即答でOKするのだが、現在は態度を保留中。優勝慣れしていない野球ファンとして、喜びをどう表現していいのかさっぱり分からないのだ。野球も競馬(馬券)も、負け慣れしてはいけない。


競馬ブック編集局員 村上和巳


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