コーナーTOP
CONTENTS
PHOTOパドック
ニュースぷらざ

1週間分の競馬ニュースをピックアップ

編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
達ちゃん






 

◆“達ちゃん”

  自身の年間最多勝記録を更新した武豊、すっかり中央の顔となった安藤勝己、冬季限定でフランスからやってきてG1を勝ちまくるオリビエ・ペリエ。こういった花形騎手たちは様々な競馬マスコミで取り上げられるため、ファンの方々の認知度がより高くなるのは当然だが、同じJRA所属の騎手でもこれから紹介する『達ちゃん』はそれほど著名ではない。そこで、まずは人物当てクイズ。四項目のヒントから該当する人物を推理してみてください。

A.通称は『達ちゃん』。30歳で独身。
B.以前は栗東・坂田厩舎に所属、JRA通算勝ち鞍は49。
C.04年春に立命館大学経営学部を卒業。
D.04年4月に渡米。L.A近郊で修行中。

  A〜Bのヒントで誰か判ったら、あなたは相当な競馬通。C〜Dも知る人ぞ知るエピソード。すべてに目を通して誰か判らないという読者の方に正解をお教えすると、栗東所属のフリー騎手・川合達彦君がその人である。そう深い付き合いもなかったせいか、私が知る限りの達ちゃんは寡黙で地味。あまり自己主張するようなタイプには映らなかった。しかし、騎手になって数年後には定時制高校に通って大学受験の検定資格を取り、そして受験。見事に合格して年下の若者と一緒に大学生活を送り、04年に無事に卒業したというのだから驚かされる。それも、03年までは騎手として平地、障害レースの双方に乗り続け、仕事と学業を見事に両立させていたというのだから、もう凄いの一語である。

  「ひとことで言うとシャイ。初対面の女の子となんてまずは喋れないタイプだから、一人で外国へ行ってること自体、いまでも信じられない。でも、熱いものを持っているヤツ。熱すぎて空回りすることもあるぐらいだから(笑)」(同期の飯田祐史騎手)

  「モーテルみたいなとこで他の外国人と一緒に生活してるとか。ビザの関係で騎手としてレースには乗れないみたいで、競走馬の調教をつけたり、あれこれ手伝ったり。英語は相変わらずダメで苦労してるようですが、日本にいてもコミュニケーションは得意じゃなかったから仕方ないかな。休日にディズニーランドへ行ってきたらしくて、“一人で行くところじゃない”ってボヤいてました。当然ですよね(笑)」(仲よしの渡辺薫彦騎手)

  達ちゃんと同期の藤井正輝騎手や亀山泰延騎手が12月に現役を引退した。短期免許で来日する外国人騎手の活躍が目立ち、地方所属の実力派の騎手たちの中央移籍が現実のものとなってきたこの時代。実力だけが勝負のプロの世界なのだから当然といえば当然だが、トップグループに入れない騎手たちの置かれている状況はどんどん厳しくなっている。そんな時代を生き続けようとするなら、騎手としてよりレベルアップするか、それとも次の人生を切り拓くかしか道は残されてない。

  経営学を学び異文化とも触れ合う―コミュニケーションが苦手でシャイな川合騎手が進む道は決して平坦ではなさそうだが、次なる人生を見据えての選択。今後をじっくり見守ろうと思っているが、熱いハートとフットワークの軽さが身上の達ちゃんのこと。今頃はブロンドの素敵な女性とディズニーランドでデートして鼻の下を長くしているかもしれない。


競馬ブック編集局員 村上和巳


競馬道Onlineからのお知らせ◆
このコラムが本になりました。
「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」東邦出版HP


copyright (C) Interchannel,Ltd./ケイバブック1997-2004