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競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
型破りの対談
“型破りの対談”
ある日突然に対談の話が持ち上がった。
競馬道OnLine
にジョッキーパラダイス(通称ジョッパラ)というコーナーがあって、そこで騎手と私とを対談させようという企画なのである。詳細を聞いてみると相手が馴染みの個性派・藤田伸二騎手であり、立会人が十数年来の飲み仲間で細やかに気配りしてくれるライター&エディターの黒須田守。その企画を聞いた段階で私の頭のなかでは、“対談”→“飲み会”→“泥酔天国”というお気楽なイメージが完成。藤田騎手も快諾してくれて一気に話がまとまった。
「ここまでは自分のやりたいようにやってきた。勝負の世界だから潰すか潰されるか。毎日が、いや、一瞬、一瞬が戦いでもある。周囲には俺のことを認めて応援してくれる人間もいれば、俺のことを認めようとしない人間もいる。認めないヤツ、無視するヤツにこちらから頭を下げるようなことはしない。そんな人種には嫌でも俺のことを認めさせてやるしかないって考えてるから。そのためには、騎手としての技術を磨くのはもちろんのこと、狙った馬を内に閉じ込めて動けなくするなんてこともレースではある。俺を敵に回すと怖いぞって思わせるのがいちばんだから。もちろん俺自身はいつ騎手をやめてもいいぐらいの覚悟で、日々馬に乗ってる」
騎手としては綺麗に乗ることも大切だが、相手の馬を不利な状況に陥れるのも高等テクニックのひとつ。「ボクの馬がテンにモタついてたら豊さんにうまく内に押し込められてしまって……」―これはシーザリオでオークスを制した福永祐一騎手の勝利インタビューの一部分。明らかに実力が一枚上と思える相手を負かそうとするなら、相手を力の出し切れない状況に追い込むのが勝負の鉄則。完璧な騎乗をした武豊と不本意ながらロスの多い騎乗をしてしまった福永祐一。結果的には馬の絶対能力の差がオークスの明暗を分けたが、そんな騎手同士の駆け引きにも注目してレース観戦をすると競馬がさらに奥の深いものになる。その意味においても、見守る側にその激しい闘争心が伝わってくる伸二の騎乗ぶりは貴重である。競馬はあくまで勝負なのだから。
「藤田先輩って妙な人なんですよ。普段だと、あれだけわがままで血の気が多い人間は珍しいと周囲に思わせるのに、いざレースに行くとびっくりするほど冷静。騎手としては完璧主義者でもあるんです。周囲がちょっとでも未熟な乗り方をしたらすぐに注意される。ことフェアプレーに対するこだわりは凄いものがあります。ごくまれに自分が誰かに迷惑をかけるようなことがあったら、検量室できちんと相手に謝罪することも忘れませんしね。最初の頃は二重人格者かと悩んだものでした」
これはある後輩騎手の藤田観である。強烈な個性はときとして誤解されがちだが、その本質は自分に素直でひたむき。自らの感性のままに日々を生きているのだ。人間社会においてこれだけ自分にこだわりを持って生き続けるのは容易なことではない。飲んで喋って笑って三時間半。口数の多さではまず負けない私だが、今回は伸二の話術の巧みさに圧倒されて、予定時間を大幅にオーバーしつつもなんとか無事に対談が終了した。この型破りの対談は4週連続で掲載されるとのこと。「全部ありのままに書いていいよ、ほんとのことだから」と伸二が言った抱腹絶倒の話や危ない話の数々を黒須田守がどうまとめるのかも興味深い。藤田ファンの方や関心のある方は
競馬道OnLine
のジョッパラを是非ご覧いただきたい。
拙著『馬も泣くほど、イイ話』のあとがきで、ある日突然に内勤に転属せよとの驚天動地の業務指令があって逡巡した話を書いた。最終的に同意したあとはトレセン関係者への挨拶回りに時間を費やした。お世話になった関係者や親しい人間に自分の言葉で事実関係をきちんと説明したかったからなのだが、型通りに挨拶を返して慰労してくれる人間もいれば優しく別れを惜しんでくれる人間もいた。そんななかで「ダメだよそんなの、村上さん。現場にいなくちゃ……」と怒った眼で私を凝視した人間がひとり。それが藤田伸二だった。折りに触れてあの眼を思い出すといまでも現場が恋しくなる。
競馬ブック編集局員 村上和巳
◆競馬道Onlineからのお知らせ◆
このコラムが本になりました。
「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒
東邦出版HP
1951年北海道生まれ。怪しげなROCK喫茶の店主兼使用人だった当時に競馬に熱中。気がつけば1977年に競馬ブック入社。趣味の競馬が職業に。以降24年間、取材記者としてトレセン、競馬場を走り回る。2002年に突然、内勤に転属。ブック当日版、週刊誌の編集に追われている。2003年1月からこの編集員通信の担当となったが、幾つになっても馬券でやられると原稿が進まない自分が情けない。
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